江戸時代初期の金毘羅参詣の土産物に端を発する香川県の丸亀うちわ。同県丸亀市で職人の集住と分業による生産体制が発展し、1997年(平成9)には国の伝統的工芸品に指定されました。しかし、職人の数は減る一方。この状況に危機感を覚え、家業のうちわ屋を継ぐ決意をしたのが、香川県団扇(だんせん)商工業協同組合に勤めていた茂木(しげき)伸彰さんです。現在は創業200年超の製造元、茂木団扇の8代目として腕を振るっています。
茂木団扇は催事用の大うちわを得意とし全国から受注がありましたが、近年では需要が減少。そこで、今までにない形状のうちわ製品を作ろうと「銘々皿」を生み出しました。竹ならではのしなやかさが美しい立体構造には、基本のうちわ作りで磨かれた職人技が活かされています。本来うちわは開いた竹骨を糸や「鎌(竹の支柱)」で固定しますが、「銘々皿」は和紙を貼ることで絶妙な形状を維持。日常づかいをしてほしいとの想いが込められており、お茶請けの小皿や小物置きとして暮らしに溶け込みます。
産地では伝統工芸士らが講師となって、うちわ製造の技術・技法講座を開催。後継者の育成にも励んでいます。各地でお祭りが本格的に復活した今年度は、大うちわの需要も復調。アイデア光る新しいうちわと伝統的な大うちわ、それぞれの制作におのずと熱が入ります。