香川県三豊市にある株式会社モクラスは、建材や家具、内装材など多種多様な木材を加工する会社。1950年(昭和25)設立の老舗企業で、近年は家庭用やアウトドア用のサウナ関連商品も手がけている。2021年(令和3)4月に開業したショコラトリー「RACATI」は、同社にとって未知の分野への挑戦。その背景には、「多様な人材が活躍できる場をつくりたい」という経営陣の想いがあった。「それを叶えたのが私なんです」と話すのは、店長でクラフトマン(チョコレート専門の菓子職人)の齊賀伸子(さいがのぶこ)さん。仁尾町出身の齊賀さんは、東京のカフェでケーキ作りを担当。飲食業や製菓の面白さに目覚めて、フランスへと渡り、製菓学校でチョコレートのデコレーション技術を学んだ。チョコレートのコースを選んだのは、彼女自身、チョコレートが好きだったからというシンプルな理由だ。
その後、10年ほど東京で子育てに専念していたが、2013年(平成25)に家族で仁尾町へUターン。生活が落ち着いた2019年(令和元)に飲食業界へと復帰した。その際に出会ったのがモクラスの矢野太一社長。矢野さんは数年前から日本でもブームになっていたBean to Barに目をつけていた。「でも矢野社長は、単にブームに乗っかろうとしたわけではないんですよ」と齊賀さん。かねてよりモクラスでは「障がいのある方が活躍できる場をつくりたい」と考えていたが、木材加工機器の扱いには危険が伴う。大きな音や振動があり、つらさを感じる障がい者も少なくない。「何か良い策はないか」と考えた時、広島県尾道市で視察したBean to Barで障がい者の方が生き生きと働く姿を目にした。以来、その実現を模索しており、伴走してくれる人材として齊賀さんに白羽の矢を立てたのだ。