四国最西端、日本で一番細長い佐田岬半島に位置する愛媛県伊方町。
半島の先端に近い三崎地域には町唯一の高校、愛媛県立三崎高等学校(愛称:みさこう)がある。
今年4月には地域社会を共に創る「社会共創科」が誕生するなど、
生徒の「やってみたい」を学校と地域が一丸となって応援するのが「みさこう」のスタイル。
佐田岬半島の先端で時代の最先端を目指す同校の活動を取材した。
最先端の学びに出会える
四国最西端の公立高校
愛媛県立三崎高等学校
「みさこうを守る!」と地域をあげて全力で支援
「みさこう」の愛称を持つ愛媛県立三崎高等学校(以下:三崎高校)は、創立74年を迎える公立高校。創立以来、地域唯一の高校として高等教育を担ってきた。
全国的に少子化が進む中、愛媛県では20年ほど前から高校再編整備が始まった。三崎高校もいずれは再編の対象になるのではないか、そう懸念した当時の先生方は、保護者や卒業生、地域の事業主や伊方町職員と共に、三崎高校の校章“花橘”を冠した「花橘を守る会」を結成。「地域の学校をなくすわけにはいかない」とさまざまな立場で意見交換を行う機会を定期的に設けた。2015年(平成27)には三崎高校の卒業生でもある先生を中心に、地域活性化に関する授業を開始。週に一度「三崎おこし」をテーマとして、地域の人たちと共に特産品を開発したり、漂流物などを用いたアート作品を制作したりするなど、地域課題を解決する実践的な授業に取り組んできた。
さらに2018年(平成30)には、学びの地域格差をなくし、世界の最先端へ飛び込むチャンスを提供するため、生徒の基礎学力アップと進路指導を目的とした「未咲輝(みさき)塾」を学校内に設置。また、寮を増やすなど地域外から生徒を受け入れる体制も強化した。
2019年(令和元)、全国からの生徒募集を本格的にスタートしたところ、生徒たちの地域活性化への取り組みや、塾や寮などの受け入れ体制が整っていることなど、同校ならではの魅力が広まり、入学希望者が急増。これまで行ってきた取り組みが実を結び、生徒数は2倍となった。「地域連携の事例が他校でほとんどなかった頃から取り組んできたことが、現在につながっている」と話すのは、今年着任した松田猛教頭先生。「先生方と地域の方の熱意が重なって化学反応を起こし、一緒になって取り組んできたことが評価された。私もこの環境には驚きました」と言う。

「地域の仲間」として生徒一人ひとりに向き合う
劇的なV字回復を経て、毎年全国から入学生が集まるようになった現在、三崎高校の全校生徒は155人に。そのうち地域外から入学した生徒ら90人が寮で生活しているという。今年度からは、「社会共創科」を設置。地域の人たちと共感しながら、ともに社会の創り手となるリーダーを育成するカリキュラムに全国から注目が集まり、首都圏や関西圏、九州など県外から20人もの生徒が入学した。
「社会共創科」の設置と同時に、今年度から全校生を対象として始動したのが「未咲輝ゼミ」。さまざまなキャリアを持つ地域の人たちを講師に迎え、放課後や休日にゼミ活動を行うもので、どのゼミに参加するかは自由。地域と関わる内容から、ウェブデザイン、料理、金融と、その内容は幅広く、自分の「好き」を深めるきっかけになる。
取材日に行われていたのは、「Café to 燈人(あかりびと)」の活動。地域おこしの一環である高校生カフェの運営を中心に、地域課題の解決に向けた企画提案に取り組むものだ。この日の活動は、町長や町職員の前で、地域にある空き地の活用方法についてのプレゼンテーションを行うというもの。発表を終えた3年生の藤枝秀大さんは「もともと内気な性格。こんなふうに人前で発表したり自分の意見を言ったりできるとは思ってもいなかった」と相好を崩す。同級生や先輩後輩、先生との関わりだけでなく地域の人たちとの一体となった関わりが、生徒たちを大きく成長させている。
過疎だから仕方ないと諦めるのではなく立場を超えて高校を支える地域の大人たち。熱い思いを持つ大人に囲まれ3年間を過ごすことが、生徒たちにとって一番の学びになる。最先端の学びを諦めない、四国最西端の高校で育まれた生徒たちは、地域みんなの応援を背に大きく羽ばたいていく。










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