木の滑らかな曲線と、藍の美しいグラデーションが印象的な酒器。手がけているのは、徳島県を拠点に地域資源の藍を活用した木製品を展開する「合同会社AOLA(あおら)」です。元々は木材を取り扱う会社の一部門でしたが、事業の急成長を機に独立しました。
天然色素の藍に着目したきっかけの一つは、建材に使われる化学物質が及ぼす人体への影響が問題視され始めたこと。当初は伝統的な藍染めの手法での着色を試みましたが思うようにいかず、試行錯誤の末に独自の染料を開発しました。従来の染料よりも色素粒子が細かく、密度の高い木の組織にもしっかりと入り込みます。吹き付け塗装も可能となり、職人の腕と木目が生きる唯一無二の製品が実現しました。
建材をはじめ大小さまざまな製品を生み出す中で、海外への日本文化の発信にも力を入れています。テーブルウェアの展開がその一環です。「例えば、日本酒は海外でも飲まれるようになりましたが、日本独自の酒器を使う機会はまだまだ少ないのが現状です。藍とともに、テーブルウェアも含めた日本の食文化を伝えていけたら」と代表の小濱利郎さんは語ります。
他にも、世界的音響メーカーとコラボレーションして製品を開発するなど、多様な業界から注目を集める「天然藍塗装」。塗装だけでなく、藍の畑の管理や染料作りも地元の農家や職人と協力して行っており、これから先も地域に根付く循環型産業としての確立を目指しています。