愛媛県伊予市双海町は、「日本の夕陽百選」にも選ばれる夕日のまち。夕日の美しさに加え、JR四国予讃線の下灘駅など全国的に注目される観光スポットも有するエリアだ。一方で、人口は3,000人ほどになり高齢化も年々進行している。そんな地域の魅力をもっと多くの人に伝えたいと奔走する20代の女性が、今回の主役。泊まれる喫茶店「ポパイ」の運営や特産品の開発・販売などに取り組むまちづくり会社「双海最高カンパニー株式会社」を取材した。
“双海愛”でつながり
一緒につくる最高な町
双海最高カンパニー株式会社

きっかけは幼い頃に「ポパイ」から見た風景
「小さい時、父の故郷であるこの町に遊びにくるたび、祖父母の営む商店の2階に泊まっていました。朝、起きると大きな窓から海が見えてきれいだったのを覚えています」。そう話すのは、昨年2月に「双海最高カンパニー株式会社(以下:双海最高カンパニー)」を立ち上げた上田沙耶さん。1959年(昭和34)に上田さんの曽祖父が始めた「レストラン・喫茶店ポパイ(以下:ポパイ)」は2000年代に入って休業し、長く親族が泊まる以外には使われていなかった。
幼少期は神奈川県横浜市で育ち、帰省するたびに「自分たちしかこの風景を見ないのはもったいないと子どもながらに感じていた」と話す上田さん。過疎化や高齢化に直面している双海町の現状を知り、双海町の未来に目を向けるようになったのは、東京で大学に通っていた19歳の頃。町を盛り上げるために、休業しているお店を再生し、喫茶店兼ゲストハウスにしたいという思いが強くなった。だが祖父母は「せっかく東京の大学で学んでいるのに」と猛反対。それでも諦めきれない上田さんは地域創生や起業についてさまざまな文献を調べ、双海エリアの地域おこし協力隊募集を見つける。双海エリアでの募集は3年に1度と聞いた上田さんは「このチャンスを逃したくない」と迷うことなく応募し、大学4年生になる2020年(令和2)4月には双海町へ地域おこし協力隊(以下:協力隊)として単身移住した。
移住と前後してコロナ禍になったことで大学はリモート授業になったため、関東との往復は避けられた。だが、人を呼び込む観光振興に力を入れることもできない。そこで、地元の生産者や漁師とともに地域団体「ふたみファンクラブ」を結成。特産品を開発するとともに、双海町のご当地グルメを販売するオンラインショップ「ふたみおうち便」を立ち上げ、運営を開始した。


滞在することで伝わる双海の魅力
協力隊として積極的に地域住民と交流し、さまざまなことに取り組む上田さんの姿を見て、反対していた祖父母も次第に応援してくれるように。地域住民からの復活を願う声もあり、2021年(令和3)3月には週末限定で「ポパイ」が再開した。同年11月には、「ポパイ」をゲストハウスとして泊まれるように改築しようとクラウドファンディングに挑戦。当初の目標金額を遥かに超える金額が集まった。
2022年(令和4)春に「海に恋する 泊まれる喫茶店ポパイ」と名を変え、喫茶店兼ゲストハウスとしてオープンすると全国から観光客が訪れるように。長期滞在する大学生や外国人観光客など、さまざまな人が訪れ、屋上や共有リビングで交流を深めている。2023年(令和5)には、東京や大阪から3名の学生が住み込みインターン生として活動に参加するなど、上田さんを中心として双海町の関係人口は増加。地域住民も「若い人が増えた」と喜んでいるという。
同年12月、協力隊を卒業した上田さんは、2カ月後に「双海最高カンパニー」を設立。協力隊時代から行ってきた「ポパイ」の運営や特産品の販売、イベント運営などを中心に活動し、地域の課題解決や魅力発信に取り組んでいる。「まちづくりをする目的は人それぞれ違うと思いますが、私の場合は“双海愛”。双海に誇りを持って生きているみんなと一緒に、双海最高!と伝えていきたい」と真っすぐな目で話す上田さん。「ポパイ」に滞在したのをきっかけに、双海町の魅力に惹かれる人たちも増えてきた。双海の夕日がこれからも輝き続けるように、双海町の未来もまた輝き続ける。

01_「ポパイ」からほど近い、道の駅ふたみシーサイド公園からの夕景。伊予灘に沈む美しい夕日は双海町の財産
02_伊予灘を一望できる「ポパイ」の客席。この景色を求めて訪れるお客さまも多い
03_休業前の「ポパイ」でも提供されていた「中華そば」。昔のままのレシピを祖母に教わって提供
04_昭和レトロな「クリームソーダ」
05_かつて上田さん家族が帰省時に宿泊していた喫茶店の奥にある和室。レトロな雰囲気をそのままに現在はゲストハウスのリビングとして活用
06·07_半個室のドミトリーと2人・4人用2つの個室があるゲストハウス。宿泊時には、屋上でのBBQや双海の特産品ハモを使った夕食も楽しめるそう(追加料金あり)
08_商店街を盛り上げようと奇数月に1度開催するイベント「双海灘町横丁はしご酒」は毎回大盛況
09·10_開発してきた特産品の数々。今後も総合地域商社として地域ならではのものを生み出す予定。東京はもちろん松山、高松などでもイベントに出店し特産品を販売。写真は東京での販売の様子
お問い合わせ
住所 | 愛媛県伊予市双海町高岸甲956-5 |
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電話番号 | 050-6870-5413 |
営業時間 | [喫茶]11:30〜16:00 [ゲストハウス]16:00〜 |
定休日 | [喫茶]月・火曜日 [ゲストハウス]毎日営業 |
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