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ジャンピングふるさと 芸術という視点でまちの今を紡ぎ直す すさき芸術のまちづくり実行委員会 芸術という視点でまちの今を紡ぎ直す すさき芸術のまちづくり実行委員会
「実行委員会」メンバーを中心に作家さんらと一緒に。右から4人目が川鍋さん

芸術という視点で
まちの今を紡ぎ直す

すさき芸術のまちづくり実行委員会

高知県須崎市は、高知市まで車で30分ほどという好立地でありながら、山と川、そして海がすぐそばにあるコンパクトシティ。ここに2013年から毎年開催されているアートプロジェクトがある。それが「現代地方譚」(げんだいちほうたん)。主催するすさき芸術のまちづくり実行委員会を取材した。

「現代地方譚」とは

「現代地方譚」は、アートを通じて地域に新たな視点と文化的価値をもたらすプロジェクト。2013年(平成25)に地域おこし協力隊として着任したアーティストの川鍋達さんら「すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸」に関わる仲間がスタートさせた、須崎市の文化資源を活かすアート活動である。市民とアーティストが協力し、地域の魅力を掘り下げながら交流と創造の場を提供。地元の人々が主体的に関わることで、文化的なつながりと地域の活性化を促すことを目的としている。

「現代地方譚」のメイン会場「すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸」

現代アートと交わることで
見える地域の魅力と課題

「須崎市を初めて訪れた時、面白い人や暮らしがたくさん詰まっているなと感じたんです」と「現代地方譚」の誕生から関わってきた川鍋達さんは言う。ドイツでアーティストとして長く活動してきた川鍋さんは2010年(平成22)ドイツから帰国。千葉で美術教師などを経て、2013年(平成25)に「すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸」の企画運営を担う地域おこし協力隊として着任した。須崎に暮らすうちに、地域の魅力はその地で暮らしていると身近過ぎてなかなか気付かないことを実感した川鍋さん。須崎市出身の画家・竹﨑和征さん、ギャラリースタッフの佐々木かおりさんとともに、アーティストが一定期間須崎市に滞在し作品を制作するプロジェクトを企画し同市に提案した。「地域での体験やリサーチをもとに生み出されたアート作品は地域の特色を色濃く反映しますし、参加者同士の対話を促す役割を果たすと考えています」と川鍋さん。市民にとっては地方ではなかなか触れることのできない現代アートに触れられる機会であり、アーティストには創作や発表の場が得られる機会となる。滞在しながら制作した作品の展示や発表の場として、2014年(平成26)1月に「現代地方譚」がスタートした。その後も開催を続けた「現代地方譚」だったが、もっと市民に関わりを持ってもらいたいとの思いから「すさき芸術のまちづくり実行委員会(以下:実行委員会)」が立ち上がった。

『現代地方譚12(2025年(令和7)1月開催)』会期中、川鍋さんによるギャラリートークの様子
写真家の赤木遥さんの作品。須崎市滞在中に撮影した写真に言葉を添えて、拾った石と合わせて展示

市民参加型への改革で
芸術がより身近な存在に

2018年(平成30)に開催した『現代地方譚5』からは、市民有志の実行委員会が中心となって、演劇や音楽など多様なジャンルを取り入れる、現在のスタイルに落ち着いた。実行委員会のメンバーは毎年春頃から集まり、コンセプトを決め、それぞれが推薦するアーティストに声を掛ける。秋頃にアーティストが須崎市を訪れ、リサーチや現地案内も実行委員が行う。「現代地方譚」の開催期間は約1カ月間。期間中は、パフォーマンスやライブイベントの運営、地域の子どもたちを対象としたワークショップなども開催する。年度末に図録を発刊し終えると、すぐに次回の企画が始まる忙しさだ。実行委員のボランティアで成り立っているプロジェクトだが、市民同士の文化的な交流の場という側面から「実行委員同士でアートの話ができるのがうれしい」と積極的に参加する人も多い。「商業的な成功よりも文化的な価値に重きを置いているのが、地域に根差した活動の魅力であり継続の鍵」だと川鍋さんは言う。

アートという概念を通じて、地域の魅力と課題を浮き彫りにする「現代地方譚」。実行委員会ではすでに設立20周年に向けて計画を立案し、それまでにこのイベントが須崎市の風物詩となることを目指している。当たり前に思いがちな日常の風景や人々の暮らしも、アートというフィルターを通して見つめ直すことで新たな価値が生まれる。その価値こそが須崎市の未来を彩り、文化的な活力を生み出していくに違いない。

いけばな作家の大薗彩芳(おおぞの さいほう)さんの作品。須崎の海で出会った素材を花に見立てて生けた
参加アーティストの作品を写真と文章で紹介する「現代地方譚」図録。(1は絶版、2・3は各1,000円で販売、4以降は無料配布)
商店街で60年以上続く「日曜市」に併せて開催する「日曜市で朝ごはん会」。コーヒーを飲みながら芸術談義に花が咲く

お問い合わせ

すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸
住所 高知県須崎市青木町1-16
電話番号 050-8803-8668
開館時間 9:00〜17:00
休館日 月曜日(祝日開館、翌日振替休館)
年末年始、臨時休館あり(搬入日等)
駐車場 あり(6台)
メール machikado.gallery@gmail.com
ホームページ https://airsusaki.machikado-gallery.com
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