コロンとした愛らしいフォルムに、深みのあるいぶし銀。白い磁肌に映える深い青の絵付けが印象的な風鈴の名は、「いぶしと砥部焼のマリアージュ」。愛媛県の伝統的特産品である菊間瓦と砥部焼を融合した作品です。砥部焼作家・恒岡志保さんの手で、一つひとつ丁寧に作られています。
陶芸家として活動を始めた頃、菊間瓦の研究助手も務めていた恒岡さん。研究員のアイデアを発端に、二つの伝統的な焼き物の技法を組み合わせた作品づくりに着手しました。同じ焼き物でも砥部焼は磁器土、菊間瓦は粘土と、焼成温度が大きく異なる素材。研究員に教わりながら試行錯誤し、3回の焼成による製法を確立しました。
最後の1回は、菊間瓦と同じ窯でいぶし焼き。県内の菊間瓦を製造する企業に依頼することが多いといいます。「訪れた際に新しい作品を見せてもらったり、意見交換をしたり…刺激を受けて熱が入ります」と恒岡さん。異なる技を持つ職人と高め合える環境も、コラボレーションの産物でした。
風鈴の短冊には、同じく愛媛県の伝統的特産品である、内子町五十崎の手漉(す)き和紙を使用。地域の伝統と技術を暮らしの中で感じてもらいたいという思いが、素材やデザインの細部にまで込められています。
作品は、菊間町にある「かわら館」で展示されており、購入も可能。「模様や音の響きなど、全く同じものがないからこそ、違いを楽しんでほしい」と恒岡さんは語ります。