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ジャンピングふるさと 地域の内と外をつなぎ“未来へ”つなげる 能津(のうづ)集落活動センター ミライエ(日高村) 地域の内と外をつなぎ“未来へ”つなげる 能津(のうづ)集落活動センター ミライエ(日高村)
仁淀川を眺めるテラス席にて、ミライエ事務局とばぁば会のみなさん。右から3人目がミライエ代表理事の田中さん、5人目が「ばぁば会」代表の畠山さん

地域の内と外をつなぎ
“未来へ”つなげる交流拠点

能津(のうづ)集落活動センター ミライエ

高知県の中山間地域、仁淀川に沿うように広がる日高村能津地区に、4年前新たに誕生した「能津集落活動センター ミライエ」。国内外から観光客が訪れる人気スポットを切り盛りするのは、元気いっぱいなお母さんたちをはじめとする地域住民の方々。自分たちの地域を“未来へ”とつなげたい!そんな思いからスタートした活動を取材した。

ミライエができるまで

「集落活動センター」とは、地域住民が中心となって地域の課題やニーズに合わせた活動に取り組む拠点のこと。集落を維持し、故郷を次世代につなぐために誕生した高知県独自の地域運営の仕組みだ。日高村能津地区では人口減少が進み「このままでは4年後には子どもがいなくなる」という危機感から、2018年(平成30)「能津みらい会議」を開いた。そこで集まった声をもとに策定された「能津地区振興計画」をベースとして2020年(令和2)8月、「一般社団法人能津未来」を設立。翌年に「能津集落活動センター ミライエ」をオープンさせ、現在まで運営している。

「能津集落活動センター ミライエ」外観

波乱の幕開けの中で
できることを模索

飲食・物販・体験などができる「能津集落活動センター ミライエ(以下:ミライエ)」の中心的存在が「ミライエ・キッチン」。県内外から訪れる観光客はもちろん、地域の人たちからも人気を集めるレストランだ。厨房で腕を振るうのは、地域の女性有志で結成した「のうづばぁば会(以下:ばぁば会)」のメンバーたち。40代から70代までの13人が持ち回りで、地域で受け継がれてきた郷土料理からボリュームのある洋食まで、バラエティに富んだメニューを提供している。

「ミライエ」がオープンしたのは、2021年(令和3)4月のこと。地域内外の交流の場として活用する予定だったが「新型コロナウイルスの影響で、観光客だけやのうて地域住民が集まることもできん、厳しい状況が続きました」と、計画当初から携わってきた「一般社団法人能津未来(以下:能津未来)」代表理事の田中登茂久(ともひさ)さんは話す。県外との往来がなくなったことで、仁淀川流域の豊かな自然を生かした体験ツアーは休業状態。「能津未来」スタッフが「ミライエ」の運営の傍ら、軽食を提供していたレストランも規模を縮小せざるを得ない状況になるなど、今後施設をどう維持していくか、という課題に直面していた。「レストランをなんとか稼働させたい」という声に、自治会や婦人会など地域のあちらこちらから「あの人ならやってくれそう」と一人の名前が上がった。それが、現在「ばぁば会」の代表を務める畠山みどりさんだ。

「ゆっくりスタートを切れて良かった。最初から忙しかったら大変やったき!」と話しながら手際よく調理する畠山さん(右)と桑名さん
日高村の特産トマトを使った2つのメニュー。「イタリアン鮎釜飯」(左)は、鮎の甘露煮をオリジナルのトマトソースと合わせて炊き込んだオリジナルレシピ。試作を繰り返し、半年以上かけて生まれた。「よくばり!オムライスドリア」(右)は、トマトをたっぷり使った味はもちろん、2〜3人前あるというボリュームも人気の理由
カラフルな色合いになるよう工夫した「田舎寿司」は看板メニューとして定着。写真は大きめの鮎の塩焼きをプラスした特別メニュー

長く続けられるよう
自立できる体制に

「自分がやるとは思うてなかった」と笑う畠山さんだが、頼られたら嫌とは言えない性格。せっかくの施設を使わないのはもったいないと仲間に呼びかけて「ばぁば会」を結成。家庭料理の延長でよければと調理を担当するようになった。最初はボランティア状態だったというが、地域のおばちゃんの手づくりの味が口コミで広まり、少しずつ客足が増えた。コロナ禍が明けると、観光客が国内外から訪れるように。畠山さんは「ずっと続けるなら、早く若い人たちにも仕事として関わってもらえる体制にせんといかんがよ」と、中心メンバーの桑名美智子さんや事務局スタッフを巻き込み、村の特産品である鮎やトマトを使った新メニューの開発、台湾からの団体客向けのお弁当づくりなど、次々と初めてのことに挑戦していった。

昨年にはこの地区に移住してきたメンバーが「ばぁば会」に参加。「移住後すぐに仲間に入れてもらえて、本当にうれしかった」というメンバーの言葉にも「わたしらぁも他(の地域)から嫁に来たがやき」と誰も気にも留めない。ここで生まれ育った地域住民も移住者も、誰もが能津地区を未来へつなぐ仲間には変わりないと笑い合う。

「ミライエ」ができたことで、移住者をはじめ関係人口や交流人口も少しずつ増えてきた。この地域が好きな人たち、みんなで楽しみながら築いていく日々。その積み重ねの先には、“持続可能な地域”という未来がきっと待っている。

本記事の取材後、畠山さんが急逝されました。取材日には明るく地域のお話をしてくださり、その笑顔がとても印象的でした。

取材先の皆さまとご相談のうえ、誌面にその姿を残すことで哀悼の意を表します。謹んでご冥福をお祈りいたします。

ミライエのもう一つの魅力、地元ガイドの案内で日高村の自然を楽しめる体験ツアー
明るい光が差し込む「ミライエ・キッチン」。ウッドテラスからは仁淀川が一望できる
対岸のいの町と能津地区をつなぐ「名越屋沈下橋」。海外からの観光客にも人気のスポットは「ミライエ」の下流約3kmに位置

お問い合わせ

能津集落活動センター ミライエ
住所 高知県高岡郡日高村本村226-1
電話番号 0889-39-1857
開館時間 [物販]10:00~16:00
[レストラン・カフェ]問い合わせ要
定休日 月曜日、第2・4日曜日、年末年始、臨時休業あり
ホームページ https://nozu-miraie.com/
体験ツアー https://nozu-nat.com/
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