香川県の庵治町・牟礼町で採れる庵治石は、「花崗岩(かこうがん)のダイヤモンド」とも称される高級石材であり、庵治産地石製品は県の伝統的工芸品に指定されています。その製造過程で生じる石粉を、50%以上配合して作られた食器が「せとうち讃岐・大地のうつわ Loci ロキ ~Ajiシリーズ~」です。
手がけるのは、陶芸作家のニシクミさん。「香川らしい器をつくりたい」と模索するなか、庵治石の石粉が産業廃棄物として処理されていることを知り、試作を始めました。「捨てられるなら、できるだけ多く使いたい」と釉薬(ゆうやく)や粘土に石粉を配合しましたが、割れや歪みなど多くの問題が発生。5年にわたる試行錯誤の末、独自のブレンド方法を確立しました。
「Loci」の魅力は、陶器でも磁器でもない独自の質感。不純物を含む庵治石だからこそ生まれる、マットで柔らかな色味も特徴です。初期のグレーに加え、グリーンやブルーなどカラーバリエーションも豊富。石粉のガラス成分が表面をコーティングするため、水や汚れに強く、さらには軽くて丈夫という機能性も兼ね備えています。
「香川を離れて暮らす人が、帰省の際にこの器を買ってくれたことが印象的でした。故郷を感じられるものができたのでは」とニシクミさん。県産オリーブを使った灰を釉薬に取り入れるなど、さらなる「香川らしさ」を追求していきたいと語ります。