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ジャンピングふるさと 自然と寄り添いながら50年先の景色を育てる 西条自然学校 自然と寄り添いながら50年先の景色を育てる 西条自然学校
案内していただいたのは、伐採後、数年が経ち、植物が自生し始めた場所。各メンバーが、地域それぞれの環境や特性に合わせて、自然保全を続けている

自然と寄り添いながら
50年先の景色を育てる

特定非営利活動法人 西条自然学校

石鎚山系の豊かな森と、名水百選に選ばれた清らかな水に恵まれた愛媛県西条市。この地を拠点に、自然と環境に関する活動を続けているのが「特定非営利活動法人西条自然学校」である。西条市中心部から車で30分。保護した犬猫とともに過ごす穏やかな拠点で、自然と人との関わりを大切にしながら地域課題に向き合う団体を取材した。

「特定非営利活動法人 西条自然学校」のこと。

原点は、西条市に住む方々に西条の自然を知ってほしいと始めた市民講座にある。2012年(平成24)に法人格を取得し、自然環境の「調査」を基に、「伝え」、「保全する」活動を県内各地で展開している。2020年(令和2)には西条市中奥に事務所を開設。自然にまつわる幅広い取り組みは高く評価され、令和2年度「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰を、さらに2025年(令和7)2月には、地域環境や教育活動を通じた社会貢献に対し贈られる南海放送賞を受賞した。

自然がもたらす課題を一緒に解決するために

設立以来、行政や企業、市民と連携しながら、愛媛県内のさまざまな地域で活動を広げてきた「特定非営利活動法人西条自然学校(以下、自然学校)」。自然に関わる若手人材の雇用をつくるため法人を立ち上げた。自然学校には、現在、哺乳類や植物、昆虫などの専門分野を持つ4名のメンバーが常駐。松山市と八幡浜市を拠点とするメンバーも在籍し、地域ごとの自然環境に寄り添った調査・教育活動を展開している。

「伝えるだけではなく、地域の自然に関わる課題を一緒に解決する存在でありたいんです」という、理事長の山本貴仁さん。体験教室やインターンシップの受け入れなど、誰もが関わりやすいような取り組みを進めてきた。自然を身近に感じてもらうための体験教室には、これまで延べ数千人が参加。特に、自然について語れる大人を増やしたいと設立当初から始めた「夜の学校」は、知識だけでなく“自然をどう受け止めるか”を学び合う場として、現在も多くの人に親しまれている。一方で、県内全域の行政と連携しながら専門家として調査を行うのも大きな使命。これまで石鎚山系や重信川水系での生物多様性調査、希少種のモニタリングや外来種の分布調査などを実施し、その結果は地域の環境政策にも活かされている。また、CSR活動や社員研修に森林再生活動を取り入れる企業への研修など、社会の幅広い層に自然保全の意識を持ってもらう牽引役としても活躍する。

自然を科学的に捉えつつ感性を研きたいという、理事長の山本さん

本来の森を取り戻し次世代へ未来を託す

現在、自然学校で力を入れているのが、人工林を自然の森へと戻す活動だ。西条市では、放置され大きくなり過ぎたスギやヒノキが水を吸い上げることで、地下水が減少し、川の水が少なくなってきているという。放置林が増えた背景には、石鎚山系特有の急斜面がある。戦後に植林したものの、木材を運ぶ手段もないことから放置され、今後も人が管理するのは難しい。そこで山本さんらが考えたのが、伐採後は自然の力に委ねるという方法だった。

鬱蒼(うっそう)として暗かった森が、伐採により風と光が差し込む場所へと変化する。しばらくすると、風や鳥が運んできたさまざまな植物の種が芽吹き、アカメガシワやカラスザンショウなどの成長の早い植物がスクスクと育ち始める。それらの植物のつくる日陰に守られながら、シイやカシなどの木々が少しずつ成長していく。「自然に委ねることで本来の生態系が蘇る。長い時間をかけて自然の森を再生するのが我々の計画であり理想です」と山本さんは話す。

自然との共生や地域特有の課題について知ってもらいたいと、毎月1回設けているのが、一般の人が活動に参加できる機会。大人への啓発を主眼としているが、中には毎回のように参加する小・中学生もいるという。さまざまな活動に参加し自然への興味を深めたことで、理学部へ進学し、研究者を志すようになった若い世代もいる。それは、自然学校の活動による、もう一つの成果である。

「参加してくれた子どもたちに『50年後の森を、僕らはきっと見ることができないから、君たちが見届けてほしい』と伝えることもあるんですよ」と笑う山本さん。未来を見据えて、森や自然と寄り添い、人を育み、地域とともに歩む自然学校。これまでの二十余年は、50年後、そして100年後へと続いていく、長い物語の序章かもしれない。

2019年 3年後 2022年 2019年 3年後 2022年
伐採当初(2019年)と3年後(2022年)の様子
活動の意義を伝えることも大切、と不定期で情報発信を続けている
取材日には、石鎚山麓に自生するケクロモジを採取後、枝葉を細かく刻んで蒸留し精油を抽出する作業が行われた。石鎚クロモジのほか、石鎚山系で育ったスギ・ヒノキのエッセンシャルオイルは西条市観光物産協会で販売している。オイルの売上が放置林の手入れ等の費用に充てられるため、その購入が森の再生の一助となる
自然学校の大切なメンバー、保護犬のまるちゃんと保護猫のにゃんこちゃん

エッセンシャルオイルはオンラインでも購入可能

イマドキ西条Online Store
オンラインストア https://kankousaijo.stores.jp/

お問い合わせ

特定非営利活動法人 西条自然学校
住所 愛媛県西条市中奥1-8-5
メール info@saijo-shizen.org
URL https://saijo-shizen.org/
X https://x.com/saijonature
Instagram https://www.instagram.com/saijo.nature/
体験教室のお問い合わせ・お申し込み taiken@saijo-shizen.org