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ジャンピングふるさと 徳島県美波町

徳島から始まった新しい学びのかたち デュアルスクール

織ちゃん(右端)の周りには常に友だちが。勉強や遊びはもちろん、掃除も一緒に
織ちゃん(右端)の周りには常に友だちが。勉強や遊びはもちろん、掃除も一緒に

徳島県南部に位置し、ウミガメの来る町として知られる美波町。2016年(平成28)に、この町からスタートしたのが、住民票を移さずに別の地域の小学校へ通うことができる「デュアルスクール」という仕組みである。徳島県と民間企業が協力して先駆的に生まれた「都市と地方を行き来しながら学ぶ」という新しい“学び方”を取材した。

デュアルスクールとは

「デュアルスクール」は、文部科学省の定める「区域外就学制度」を活用し、住民票を移すことなく、他の地域の小学校や中学校で一定期間の義務教育を受けられる仕組み。滞在先である受け入れ校に登校することで、居住地域の学校へ通学しなくても「出席」とみなされるため、普段とは異なる環境で学び、暮らすことができる。徳島県では、制度開始後、毎年複数の家族が参加。制度をくりかえし使用することで二拠点居住を実践する家族や、徳島県内への移住を実現した家族も増えている。

子どもを持つ家族が動きやすい社会に向けて

「デュアルスクール」という新しい学びを発案し、行政とともに仕組みづくりを行ったのは、徳島県美波町に拠点を置く株式会社あわえ。同社の代表である吉田基晴さんが直面した二拠点居住の課題をきっかけに、この制度は生まれたという。

2012年(平成24)、出身地である美波町にIT企業のサテライトオフィスを開設した吉田さんは、家族を東京に残して二拠点での生活をスタートさせた。家族と一緒に行き来することも考えたが、子どもが小学校に上がったため断念。「仕方なく行ったり来たりしていたら、家族から『パパだけズルい』と言われるようになったんです(笑)。父親として家族と会えないのは寂しかった」と話す吉田さん。また経営者としてもこの教育問題を解決しないと、独身者など単身で動ける人以外を地方に呼ぶのは難しいと実感したという。同じ悩みを他の家族も抱えているはずと考えた吉田さんは、「区域外就学制度」を二拠点居住やワーケーションでも活用できるよう徳島県へ提言。サテライトワーカーや地域人材を積極的に受け入れたい徳島県の賛同を得て、2016年に徳島県と協働で「デュアルスクール」をスタートさせた。

美波町の公立小学校での受け入れから始まった「デュアルスクール」。これまでに県内で累計11の自治体、26の小中学校で受け入れを行ってきた。出産や介護のため実家に帰省する際の子どもの受け入れ先としての利用や、移住の前に子どもが徳島の学校になじめるかどうか確認したい、企業のワーケーションに子どもたちも同行させたい…と、参加する理由は家族によってさまざま。2024年度(令和6年度)に参加した10組を追跡したところ、2組が徳島県内に移住。4組が「デュアルスクール」を継続利用して二拠点居住を続けている。

「いろいろな場所で当たり前のように学べる社会にしていくのが、本来のデュアルスクールのあり方。そうなるのがゴールです」と話す株式会社あわえ代表の吉田さん
「いろいろな場所で当たり前のように学べる社会にしていくのが、本来のデュアル
スクールのあり方。そうなるのがゴールです」と話す株式会社あわえ代表の吉田さん

他の地域との違いが子どもの世界を広げる

昨年11月、美波町立日和佐小学校2年生のクラスにやってきたのは、普段は兵庫県に住む織(おり)ちゃん。母方の祖父母が美波町で暮らしている縁から「デュアルスクール」を知り、1年前に続いて2回目の参加。町内の祖父母の家で過ごしながら、小学校に通っている。

受け入れ先では、特別なカリキュラムが用意されているわけではない。他の児童とともに授業を受け、休み時間には校庭で遊び、給食を食べる。受け入れ先の学校で、子どもたちが出会い、学び、遊ぶ、普段の生活に意味があるという。例えば、美波町の子どもたちにとってウミガメは珍しいものではないが、他の地域から来た子どもたちはウミガメを見たことがない。訪れた子どもの驚いたような反応を見て、美波町の子どもも珍しいことに気づく。違う視点が入る日々は、互いにとって発見の連続だ。

「いつも通っている学校は、もっと教室の数も人数も多い」と話す織ちゃん。取り囲む子どもたちは織ちゃんの話に興味津々で「いつもは何してるん?」「これ、やったことある?」と会話が弾む。一緒に遊び、一緒に学ぶうちに、距離はどんどん縮まっていく。

「今のところ都市部から地方へ行くケースが多いので、地方移住のための制度のように思われますが、それが最終的な目的ではないんです。都市と地方、どちらにも良いところ、悪いところがある。そもそも、こんなに複雑化している社会を、一つの教室だけで学ぶなんて無理な話。だからこそ違う場所に一定期間身を置いてみることや、新しい考えを受け入れることに価値がある」と吉田さんは言う。違いに気づくことで、選択肢の幅を広げていく子どもたち。その先に、都市と地方の新しい関係性が生まれていくはずだ。

居住地の学校と習っている単元が違うことがあるため、授業中はデュアルスクール担当の先生がサポートしてくれる
居住地の学校と習っている単元が違うことがあるため、授業中はデュアルスクール担当の先生がサポートしてくれる
居住地の学校と習っている単元が違うことがあるため、授業中はデュアルスクール担当の先生がサポートしてくれる
居住地の学校と習っている単元が違うことがあるため、授業中はデュアルスクール担当の先生がサポートしてくれる
委員会活動にも積極的に参加する織ちゃん
委員会活動にも積極的に参加する織ちゃん
休み時間には、みんなで鉄棒に挑戦
休み時間には、みんなで鉄棒に挑戦
移住したいけれど、子どもたちが学校になじめるかが不安との理由で、2024年にデュアルスクールに参加し、2025年春に那賀町へ移住したご家族
移住したいけれど、子どもたちが学校になじめるかが不安との理由で、2024年にデュアルスクールに参加し、2025年春に那賀町へ移住したご家族
昨年、家族が阿南市への移住を検討する中でデュアルスクールに参加した琴音ちゃん。参加中にできた友だちと過ごせる日も近そう!
昨年、家族が阿南市への移住を検討する中でデュアルスクールに参加した琴音ちゃん。参加中にできた友だちと過ごせる日も近そう!
居住地の学校と習っている単元が違うことがあるため、授業中はデュアルスクール担当の先生がサポートしてくれる
居住地の学校と習っている単元が違うことがあるため、授業中はデュアルスクール担当の先生がサポートしてくれる
委員会活動にも積極的に参加する織ちゃん
休み時間には、みんなで鉄棒に挑戦
移住したいけれど、子どもたちが学校になじめるかが不安との理由で、2024年にデュアルスクールに参加し、2025年春に那賀町へ移住したご家族
昨年、家族が阿南市への移住を検討する中でデュアルスクールに参加した琴音ちゃん。参加中にできた友だちと過ごせる日も近そう!

株式会社あわえ

住所
徳島県海部郡美波町日和佐浦114
ホームページ
https://dualschool.jp/
Instagram
https://www.instagram.com/ds_tokushima/
株式会社あわえ
https://www.awae.co.jp/