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美しい村の食べもの紀行 さなのご馳走を訪ねて

特集

美しい村の食べもの紀行 さなのご馳走を訪ねて

山間に広がる山神果樹薬草園の柑橘農園。地元採用を含めたスタッフたちが生き生きと働いている。「地元の方たちとの交流も大切にしています」と早川さん(右から2人目)
山間に広がる山神果樹薬草園の柑橘農園。地元採用を含めたスタッフたちが生き生きと働いている。「地元の方たちとの交流も大切にしています」と早川さん(右から2人目)
日本の原風景を思わせる府能(ふのう)地区。一帯の土壌はミネラル豊富な粘土質の赤土層に恵まれており、稲作に適している
日本の原風景を思わせる府能(ふのう)地区。一帯の土壌はミネラル豊富な粘土質の赤土層に恵まれており、稲作に適している
ゆずやすだち、いよかんなど和柑橘を原料としたリキュール。山神果樹薬草園に併設したファクトリーショップやオンラインストア、(一財)さなごうちが運営する地域交流拠点「新家(しんや)」にて購入できる
ゆずやすだち、いよかんなど和柑橘を原料としたリキュール。山神果樹薬草園に併設したファクトリーショップやオンラインストア、(一財)さなごうちが運営する地域交流拠点「新家(しんや)」にて購入できる
村のおっさん豆腐の人気商品。青大豆を使用した「こいまろ。PREMIUM」や「充填こいまろ。」、「ネコ豆腐」のいずれも全国豆腐品評会で高い評価を受けた
村のおっさん豆腐の人気商品。青大豆を使用した「こいまろ。PREMIUM」や「充填こいまろ。」、「ネコ豆腐」のいずれも全国豆腐品評会で高い評価を受けた
かつて、火災を知らせるために村のあちらこちらにあった半鐘。村の風景の象徴ともいえる「和協(わきょう)の半鐘」は今も年末に防災のために鳴らされている
かつて、火災を知らせるために村のあちらこちらにあった半鐘。村の風景の象徴ともいえる「和協(わきょう)の半鐘」は今も年末に防災のために鳴らされている
佐那河内村を源流に、徳島市内で新町川と合流する園瀬川。その水源地には水波能売(みずはのめ)神社の鳥居があり、荘厳な雰囲気
佐那河内村を源流に、徳島市内で新町川と合流する園瀬川。その水源地には水波能売(みずはのめ)神社の鳥居があり、荘厳な雰囲気
山間に広がる山神果樹薬草園の柑橘農園。地元採用を含めたスタッフたちが生き生きと働いている。「地元の方たちとの交流も大切にしています」と早川さん(右から2人目)
日本の原風景を思わせる府能(ふのう)地区。一帯の土壌はミネラル豊富な粘土質の赤土層に恵まれており、稲作に適している
ゆずやすだち、いよかんなど和柑橘を原料としたリキュール。山神果樹薬草園に併設したファクトリーショップやオンラインストア、(一財)さなごうちが運営する地域交流拠点「新家(しんや)」にて購入できる
村のおっさん豆腐の人気商品。青大豆を使用した「こいまろ。PREMIUM」や「充填こいまろ。」、「ネコ豆腐」のいずれも全国豆腐品評会で高い評価を受けた
かつて、火災を知らせるために村のあちらこちらにあった半鐘。村の風景の象徴ともいえる「和協(わきょう)の半鐘」は今も年末に防災のために鳴らされている
佐那河内村を源流に、徳島市内で新町川と合流する園瀬川。その水源地には水波能売(みずはのめ)神社の鳥居があり、荘厳な雰囲気

徳島県の北東部に位置する佐那河内村(さなごうちそん)は、県内で唯一の「村」。この地で農耕が始まったのは平安時代中期といわれ、1000年もの歴史を誇っている。村の中央には中峰(なかみね)山があり、水量豊富な園瀬川(そのせがわ)を抱くこの土地では、至るところで美しい里山の景色と出会える。また棚田米や果樹などの食材を生かした村ならではの「ご馳走」もある。

村の長い歴史の中で変わらずに受け継がれているのは、自然や風景だけではない。佐那河内村の住民自治組織「常会(じょうかい)」が育む村人の絆は、この村の豊かさの象徴であり、これが移住促進にもつながっている。

住民たちの中には、愛する故郷のことを「さな」と呼ぶ人もいる。実りの秋、「さなのご馳走」とそれを守り、新たな味わいを生み出そうとする村人たちを訪ねる旅へと出かけた。

昔ながらの風習と景観 懐かしさを秘めた村

地元素材を使った商品が好評の佐那河内ジェラート。テイクアウト専門だが、隣接する新家の店内に持ち込んで味わうことができる
地元素材を使った商品が好評の佐那河内ジェラート。テイクアウト専門だが、隣接する新家の店内に持ち込んで味わうことができる
園瀬川の支流、嵯峨川の上流にあるのは奇岩が転がる嵯峨峡。嵯峨川は子どもたちの水遊びの場でもある
園瀬川の支流、嵯峨川の上流にあるのは奇岩が転がる嵯峨峡。嵯峨川は子どもたちの水遊びの場でもある
812年(弘仁3)に天照大神や月讀命(つきよみのみこと)、大白星神を勧請したと伝承されている嵯峨天一神社。他にも村内には古寺社が多数ある
812年(弘仁3)に天照大神や月讀命(つきよみのみこと)、大白星神を勧請したと伝承されている嵯峨天一神社。他にも村内には古寺社が多数ある
移住コーディネーターの柏木さん(左)と、(一財)さなごうち代表理事の市原さん(右)。「村の魅力を発信し、移住や交流人口の拡大につなげたい」と望んでいる
移住コーディネーターの柏木さん(左)と、(一財)さなごうち代表理事の市原さん(右)。「村の魅力を発信し、移住や交流人口の拡大につなげたい」と望んでいる
蒸しあがったばかりのういろを手にする長尾さん。「粗熱が取れてから切り分けるのがコツ」と話す
蒸しあがったばかりのういろを手にする長尾さん。「粗熱が取れてから切り分けるのがコツ」と話す
地元素材を使った商品が好評の佐那河内ジェラート。テイクアウト専門だが、隣接する新家の店内に持ち込んで味わうことができる
園瀬川の支流、嵯峨川の上流にあるのは奇岩が転がる嵯峨峡。嵯峨川は子どもたちの水遊びの場でもある
812年(弘仁3)に天照大神や月讀命(つきよみのみこと)、大白星神を勧請したと伝承されている嵯峨天一神社。他にも村内には古寺社が多数ある
移住コーディネーターの柏木さん(左)と、(一財)さなごうち代表理事の市原さん(右)。「村の魅力を発信し、移住や交流人口の拡大につなげたい」と望んでいる
蒸しあがったばかりのういろを手にする長尾さん。「粗熱が取れてから切り分けるのがコツ」と話す

2016年(平成28)に設立された「一般財団法人さなごうち」は、移住や定住、交流に関わる事業や商業施設「新家(しんや)」の運営などに取り組む団体。「住民と村外のつなぎ役となれるよう、多様な活動を展開しています」と話すのは、代表理事の市原万里さん。彼女と移住コーディネーターの柏木真由美さんは、ともに結婚を機に、この村へとやって来た移住者。外からの視点で移住者に寄り添い、的確なアドバイスを行えるのが強みだ。特に常会については、あらかじめしっかりと説明を行っている。藩政時代の五人組(※)の流れを汲んでいるといわれている常会は、近隣の住民同士が伝達事項を共有し、決め事を行う組織。現在、村内には47の常会が存在しており、地域住民同士の大切なコミュニケーションの場にもなっている。「河川清掃や道路愛護活動(草刈り)などの『つじ仕事』も、常会単位で行っています。そうした機会が、移住者を集落になじみやすくしてくれているのです」と柏木さん。

一方、村には観光客を魅了する景観が点在している。雄大なパノラマを望む大川原高原、園瀬川の源流となる水波能売(みずはのめ)神社、府能(ふのう)地区の棚田、和協(わきょう)地区の半鐘。「徳島市内からは車で約30分とアクセスは良好。ぜひ、懐かしさを感じさせる風物を見に来てほしい」と願う市原さんと柏木さんだ。

※年貢の納入や防犯のために近所の数戸をまとめたグループ

「いり飯」や「ういろ」 営みから生まれた郷土の味

弁当の製造など食にまつわる事業に取り組む女性たち。中列右から2人目が代表の長尾さん
弁当の製造など食にまつわる事業に取り組む女性たち。中列右から2人目が代表の長尾さん
村の郷土料理「いり飯」。日曜とうふ食堂でも提供しており、素朴な味わい
村の郷土料理「いり飯」。日曜とうふ食堂でも提供しており、素朴な味わい
もっちりとした食感と優しい甘味のういろ。かつては各家庭で手作りするのが当たり前だったそう
もっちりとした食感と優しい甘味のういろ。かつては各家庭で手作りするのが当たり前だったそう
弁当の製造など食にまつわる事業に取り組む女性たち。中列右から2人目が代表の長尾さん
村の郷土料理「いり飯」。日曜とうふ食堂でも提供しており、素朴な味わい
もっちりとした食感と優しい甘味のういろ。かつては各家庭で手作りするのが当たり前だったそう

佐那河内村の郷土料理といえば、いりこやしいたけ、ごぼうを具材としたまぜご飯「いり飯」が有名。農林水産省の「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」にも選定されている。

「昔は農作業も近所で助け合いをしていました。その後に、振る舞っていた料理なんです。魚が手に入りにくかった時代にも、出汁用のいりこなら家庭に常備していたから作りやすかったんでしょうね」と説明するのは、婦人会の会長・長尾久代さん。もともとは嵯峨地区で根付いていたものだが、今では「村の味」として親しまれている。具材の味付けには地元のすだち酢を使っており、爽やかな風味が食欲をそそる。

また徳島県といえば、米粉と小豆、砂糖を原料にした「ういろ」が知られている。佐那河内村では小豆ではなく、ささげ(大角豆)を使ったういろが作られていた。「私にとって、ういろは子ども時代を思い起こさせるお菓子」と長尾さんは目を細める。徳島県には桃の節句の日に、子どもたちが野山や磯で遊ぶ「遊山(ゆさん)」という風習がある。その日は、遊山箱(三段重の小さな弁当箱)に寿司やういろを詰めておくのがお決まり。「普段は家の手伝いや勉強に追われていましたが、この日だけは自由に遊べました。本当に楽しかった」。そんな思い出話とともに、ういろの味わいを婦人会の若いメンバーに伝えたいと考えている。

村の和柑橘を使い切るという発想

独自の「丸ごと皮削り®」製法により、皮由来の苦味やえぐみのないすっきりとした口当たりのジュース。無濾過なので繊維質もたっぷり
独自の「丸ごと皮削り®」製法により、皮由来の苦味やえぐみのないすっきりとした口当たりのジュース。無濾過なので繊維質もたっぷり
晩秋に実りの時期を迎えるゆず。有機栽培で育てられており、安心して皮ごと使うことができる
晩秋に実りの時期を迎えるゆず。有機栽培で育てられており、安心して皮ごと使うことができる
段々畑の中道に開けた農園とファクトリーショップ。オープンガーデンやワークショップなど、イベントも開催している
段々畑の中道に開けた農園とファクトリーショップ。オープンガーデンやワークショップなど、イベントも開催している
独自の「丸ごと皮削り®」製法により、皮由来の苦味やえぐみのないすっきりとした口当たりのジュース。無濾過なので繊維質もたっぷり
晩秋に実りの時期を迎えるゆず。有機栽培で育てられており、安心して皮ごと使うことができる
段々畑の中道に開けた農園とファクトリーショップ。オープンガーデンやワークショップなど、イベントも開催している

山神地区にある「山神果樹薬草園」は、東京都墨田区に本社を置く松山油脂株式会社の自社農園。「当社の主事業である化粧品に使用する和柑橘の精油を求めて、国内の産地を巡っていたときに知ったのが、佐那河内村です」とリーダーを務める早川平さん。徳島県は佐那河内村をはじめとして、多くの地域でゆずやすだちといった和柑橘の栽培が盛んであること、何より佐那河内村が6次産業化に前向きで同社を歓迎してくれたことが追い風となり、2020年(令和2)に農園とファクトリーショップがオープンした。

耕作放棄地や田畑であった土地で土づくりから取り組み、和柑橘を栽培。そこから精油を抽出し、自社のスキンケアやボディケア商品に使用するのが当初の目的だった。しかし、精油や果汁を抽出した後には大量の残渣(ざんさ)(残りかす)が生じる。これらを無駄にすることなく、100%柑橘を使い切るために、食品の製造も開始した。「私たちは搾汁後の内皮や袋、繊維質を活用してコーディアル(濃縮シロップ)やリキュールを製造しています。また最終的な残渣は、使用済みのしいたけ菌床と竹パウダーを混ぜて堆肥にしているんですよ」と「丸ごと全てを使い切る」というポリシーを徹底している。

山神果樹薬草園では、近隣の生産者からも生果の買い付けを行っており、また地元の若者を採用するなど、地域への貢献も果たしている。

関東で生まれ育った早川さんにとって、この村は桃源郷のようだと言う。「農園内には村を一望できるポイントもあります。自由に散策できるので、気軽に遊びに来ていただいて、ぜひ村の素晴らしさを体感してほしい」と早川さんはほほ笑む。

ユニークな屋号で唯一無二の味わいを提供

佐那河内村のふるさと納税返礼品としても好評のドーナツは、豆腐とおからを使用。外はカリカリ、中はしっとり、モチモチとした食感。通常はテイクアウト販売しているが、日曜日には阿波晩茶と一緒にイートインできる
佐那河内村のふるさと納税返礼品としても好評のドーナツは、豆腐とおからを使用。外はカリカリ、中はしっとり、モチモチとした食感。通常はテイクアウト販売しているが、日曜日には阿波晩茶と一緒にイートインできる
かつては食料品店として村の生活を支えていたが、今は豆腐で村外から人を集めている「桑原豆腐店」
かつては食料品店として村の生活を支えていたが、今は豆腐で村外から人を集めている「桑原豆腐店」
日曜とうふ食堂ではゆしどうふを肉すいや天津麻婆などにアレンジ。「こいまろ。」のあげだし、濃厚とろゆば刺身も人気
日曜とうふ食堂ではゆしどうふを肉すいや天津麻婆などにアレンジ。「こいまろ。」のあげだし、濃厚とろゆば刺身も人気
「村のおっさん」こと桑原さん。デザート感覚で味わえる豆腐など、村で新たな豆腐文化を生み出している
「村のおっさん」こと桑原さん。デザート感覚で味わえる豆腐など、村で新たな豆腐文化を生み出している
沖縄県糸満市の豆腐店から製法を伝授され、4年前から作り始めたゆしどうふ。日曜とうふ食堂では1人350円で食べ放題となる
沖縄県糸満市の豆腐店から製法を伝授され、4年前から作り始めたゆしどうふ。日曜とうふ食堂では1人350円で食べ放題となる
佐那河内村のふるさと納税返礼品としても好評のドーナツは、豆腐とおからを使用。外はカリカリ、中はしっとり、モチモチとした食感。通常はテイクアウト販売しているが、日曜日には阿波晩茶と一緒にイートインできる
かつては食料品店として村の生活を支えていたが、今は豆腐で村外から人を集めている「桑原豆腐店」
日曜とうふ食堂ではゆしどうふを肉すいや天津麻婆などにアレンジ。「こいまろ。」のあげだし、濃厚とろゆば刺身も人気
「村のおっさん」こと桑原さん。デザート感覚で味わえる豆腐など、村で新たな豆腐文化を生み出している
沖縄県糸満市の豆腐店から製法を伝授され、4年前から作り始めたゆしどうふ。日曜とうふ食堂では1人350円で食べ放題となる

国道438号沿いで目を引くのは、「村のおっさん」という看板の豆腐店。創業は明治後期、元々は豆腐店兼食料品店だったが、2006年(平成18)に桑原年朗さんが父親から店を引き継いで四代目となり、新しい屋号で豆腐専門店とした。

桑原さんは、まず県内の豆腐店を訪ねて、味や価格をリサーチした。「同じような豆腐を作っても意味がない。遠くてもわざわざ買いに来てもらえる豆腐を作りたい」と、材料と製法を研究。豆乳の濃度を高めた豆腐を売り出した。

価格の高さもあってか、最初はなかなか売れず、知名度を上げたいと各地のイベントに積極的に出店。並行して研究を続け、2年後には豆乳の濃度をさらに高めた商品を開発。全国展開する大手飲食店との取引開始が追い風となり、多くの人に知られるようになった。

また全国豆腐連合会主催の全国豆腐品評会では4回にわたって金賞を受賞。「賞を追いかけている訳ではないが、やっぱり嬉しい」と桑原さんは話す。3年前から日曜日のみ、「日曜とうふ食堂」としてランチ営業を開始。看板商品の「充填こいまろ。」や本場沖縄で学んだ「ゆしどうふ」を使った料理を提供。静かな山村に、行列を生み出している。

豆腐は全国どこでも手に入れることができるが、佐那河内村には村のおっさんが作る唯一無二の豆腐が存在している。

思い出の味覚を再現し、生み出す

歴史ある古民家をリノベーションした施設。海外からの観光客にも評判が広がっている
歴史ある古民家をリノベーションした施設。海外からの観光客にも評判が広がっている
快適に整えられた室内。レトロ風にアレンジしたテレビも面白い
快適に整えられた室内。レトロ風にアレンジしたテレビも面白い
(株)結プロジェクト代表の出口さん。「風景や営みはもちろんですが、村の最大の魅力はあたたかい住人の皆さんです」と話す
(株)結プロジェクト代表の出口さん。「風景や営みはもちろんですが、村の最大の魅力はあたたかい住人の皆さんです」と話す
さなごうち揚げを主菜にしたランチ。大ぶりな唐揚げも、爽やかな酸味でペロリと食べられる
さなごうち揚げを主菜にしたランチ。大ぶりな唐揚げも、爽やかな酸味でペロリと食べられる
いり飯をアレンジしたお食事処ゆいねオリジナルの「いり飯いなり」
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歴史ある古民家をリノベーションした施設。海外からの観光客にも評判が広がっている
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(株)結プロジェクト代表の出口さん。「風景や営みはもちろんですが、村の最大の魅力はあたたかい住人の皆さんです」と話す
さなごうち揚げを主菜にしたランチ。大ぶりな唐揚げも、爽やかな酸味でペロリと食べられる
いり飯をアレンジしたお食事処ゆいねオリジナルの「いり飯いなり」

のどかな棚田の景色を望む府能地区にあるのは、一棟貸しの宿や食事処を運営する「株式会社結(ゆい)プロジェクト」。代表の出口昇さんは、広島県出身で、大手スーパーの販売営業からホテル支配人へと転身し、後に宿泊施設運営のディレクターとして独立して、全国の施設に関わっていた。ある日、食材探しのために訪れた佐那河内村で、古民家に住む地域おこし協力隊員の相談を受けた出口さん。その建物こそが、築120年を超える古民家「旧高木邸」。「ひと目見た瞬間、何か運命的なものを感じ、隊員の方が結婚のために村を離れると聞いて、すぐに大家さんに会いに行きました」と振り返る。この建物を活用したいと言う出口さんの熱意が、所有者の心を動かした。

佐那河内村に住民票を移した出口さんは、荒れ放題だった建物を住民たちの協力を得ながらリノベーションし、2022年(令和4)に「千年乃宿 旧高木邸」を開業。その後、敷地内の蔵を改装した「米乃蔵」「麦乃蔵」「お食事処ゆいね」も営業している。

「ゆいねの名物は、村の子どもたちにとってなじみ深い料理なんですよ」と出口さん。今から30年ほど前から、村の小中学校の給食で提供されていた「さなごうち揚げ」をアレンジして提供しているのだ。これは鶏肉の唐揚げに甘酢を絡めた料理で、酸味にはすだちを使っている。

実は出口さんは佐那河内中学校の「ふるさと学習」に協力しており、アレンジしたさなごうち揚げは授業の中から誕生したそう。他にもゆずやすだち、柚香(ゆこう)など村の特産品を使った新たな名物を、子どもたちと一緒に開発中だ。

「村を離れた方にも、思い出の味を通して故郷への愛着を思い起こしてほしい」と願う出口さん。メニュー開発に関わった中学生にとっては、かけがえのない記憶となるはずだ。

いり飯、豆腐、さなごうち揚げ。「さなのご馳走」は決して高級食材を使ったものではない。だが、口にした瞬間に思わず笑顔になり、作り手たちの顔が思い浮かぶ、そんな魅力に満ちている。

(一財)さなごうち(新家)

住所
徳島県名東郡佐那河内村上字宮前84-1
電話番号
088-636-4030
ホームページ
https://sanagochi.foundation/

山神果樹薬草園

住所
徳島県名東郡佐那河内村下字山神43-2
電話番号
088-679-2277
ホームページ
https://www.yamagamikaju.com/

村のおっさん(桑原豆腐店)

住所
徳島県名東郡佐那河内村上字宮前64-3
電話番号
050-8883-1678
ホームページ
https://muranoossan.com/

(株)結プロジェクト

住所
徳島県名東郡佐那河内村上府能104
電話番号
090-2008-7303
ホームページ
https://yuiproject3751.com/