伊方発電所における通報連絡事象の概要(平成15年6月分)
1.伊方3号機 総合排水処理装置脱水機制御盤電源装置の不具合について
6月7日0時31分頃、通常運転中の伊方3号機において、総合排水処理装置の異常を示す信号が発信した。
調査の結果、脱水機操作盤内の漏電ブレーカーの故障であることが判明したため、当該ブレーカーを新品に取り替え、復旧した。
[総合排水処理装置] |
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非管理区域(タービン建屋、総合事務所など)の一般排水や海水淡水化装置の排水を浄化処理する設備。
脱水機は、総合排水処理装置で処理する排水から取り出した固形分の水分を除去する装置。 |

2.伊方1号機 小口径配管における微小な傷(安全注入系統テストライン配管のひび)について
6月13日、第21回定期検査中の伊方1号機において、原子炉格納容器内の小口径配管(安全注入系統テストライン)にテープとみられる付着物(4箇所)を発見した。このため、当該箇所の液体浸透探傷検査を実施したところ、このうち3箇所で欠陥指示(傷)を確認した。
調査の結果、 |
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建設時の試験において、当該配管に高温水が流れたこと |
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付着物は塩化ビニールテープと推測されたこと |
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欠陥指示箇所を切り出しての配管表面の拡大観察で粒内割れが認められたこと |
から、配管表面に貼り付けた塩化ビニールテープが高温水により熱分解し、塩化物応力腐食割れ(塩化物SCC)が発生したことによるひびと判断した。 |
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また、当該テストラインの配管について調査を行い、更に77箇所に付着物を確認した。これらについて、液体浸透探傷検査を行った結果、新たに6箇所に欠陥指示が確認されたが、表面をうすく研削することで、指示は消滅した。 |
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塩化ビニールテープによる塩化物SCCに関しては、平成12年の「伊方1号機充てん配管耐圧検査時の漏えい事象」の水平展開として、運転中に高温水が流れ塩化物SCCが発生する可能性のあるステンレス配管の点検は既に終了しているが、今回の事象を踏まえ、高温水が流入する可能性のある類似配管の点検を実施した結果、当該テストライン以外には異常は認められなかった。切り出した箇所については、新品の配管に取り替えた。 |
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また、念のため、漏えいが発生すると原子炉の運転に支障を及ぼす系統および放射能を含む系統で、高温水が流入する可能性がない範囲についても、今後2定検で計画的に点検または取り替えを実施する。
伊方2,3号機については、1号機と同じ範囲を、今後3定検で計画的に点検または取り替えを実施する。 |
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3.伊方3号機 2次系補助設備制御盤の不具合について
通常運転中の伊方3号機において、2次系補助設備制御盤の異常を示す信号が発信したことから、同制御盤を確認していたところ、6月20日9時45分、2台ある操作卓のうち1台で、2次系補助設備の状態監視、機器の操作ができないことが判明した。
点検の結果、当該操作卓の制御カードの1枚が不良であることが確認されたため、制御カードを取り替え、復旧した。
なお、2次系補助設備の操作卓は同機能のものが2台あることから、2次系補助設備の運転に影響はなかった。
[2次系補助設備制御盤] |
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復水脱塩装置、海水淡水化装置、総合排水処理装置等の2次系補助設備の状態監視、ポンプや弁等の機器の操作を行う操作卓で、2台で構成されている。 |

4.伊方1号機 定検作業中の作業員の体調不良について
6月24日13時50分頃、第21回定期検査中の伊方1号機において、タービン建家入口付近の屋外で工事の片づけ作業を行っていた作業員の1名が体調不良となった。このため、当該作業員を八幡浜市内の病院に搬送した。診察の結果、異常はなかった。
伊方発電所における通報連絡事象の報告書概要(平成15年5月分他)
1.伊方1号機 湿分分離加熱器マンホールからの漏えいについて
○事 象
1月4日4時10分頃、通常運転中の伊方1号機において、湿分分離加熱器Bのマンホール付近から微少な蒸気の漏えいがあることを運転員が発見した。
点検の結果、マンホールを締め付けているボルト付近から漏えいしていることが確認されたため、マンホールを締め付けているボルトを増し締めし、蒸気の漏えいを停止した。
○原 因
調査の結果、 |
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1号機第20回定期検査において、当該マンホールの点検後の締め付けおよびプラント起動後(50%負荷時)の増し締め時に、トルク管理による適正な締め付けが実施されていたこと |
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事象発生時に実施した当該マンホールの増し締め(パッキン圧縮量の増加)により、漏えいが停止したこと |
から、プラント運転による圧力、温度の変動により、マンホールシート面の一部がわずかに歪み、その部分においてパッキン圧縮量が低下したため、蒸気が漏えいしたものと推定される。 |
○対 策
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当該マンホール座および蓋のシート面を手入れするとともに、シート面の歪みを吸収できるよう、パッキンの厚さを2mmから3mmに変更した。 |
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湿分分離加熱器の他の同型のマンホールについても、同様にパッキンの厚さを変更することとし、1号機については第21回定期検査において、また、2号機については既に第16回定期検査において取り替えた。 |
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従来実施していた、プラント起動後の50%出力運転時の増し締めに加えて、100%出力運転時にも増し締めを実施することとした。 |

2.伊方1号機 体積制御タンク出口配管予備管台のほう酸析出について
○事 象
2月18日14時5分頃、通常運転中の伊方1号機において、体積制御タンク出口配管に設置している予備の管台に、1次冷却材がにじみ出したためにできたと思われるほう酸の付着を保修員が発見した。
点検の結果、当該管台からの漏えいは既に停止しており、肉眼で確認できる欠陥はなかったことから、当該管台に微小な貫通が発生したものと推定した。このため、当該管台をエポキシ樹脂により補修し、漏えいのないことを確認した。その後、第21回定期検査において、当該管台を新しい管台に取り替えた。
○原 因
当該管台の現地溶接を実施の際、当該管台が狭い所にあることから、作業空間が十分確保できない状況で溶接作業を行ったため、溶接不良が生じた。これにプラント起動時に発生する体積制御タンクの圧力変動による疲労が加わり、溶接不良部分が貫通し、系統水がにじみ出てほう酸が析出したものと推定される。
○対 策
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当該管台栓および管台の一部を切断し、新しい管台栓を溶接した。溶接にあたっては、溶接作業に干渉する配管サポート等を一時撤去して作業空間を十分に確保し、適正な溶接を行った。 |
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配管等の溶接作業を行う際は、作業空間を十分に確保したうえで適正な溶接を行うよう、関係箇所に周知した。 |

3.伊方3号機 復水脱塩装置再生用水ポンプ出口配管フランジ部からの漏えいについて
○事 象
3月27日13時57分頃、通常運転中の伊方3号機において、復水脱塩装置再生用水ポンプ出口配管のフランジ部から純水が漏えいしていることを作業員が発見した。このため、当該系統を隔離して漏えいを停止した。
点検の結果、パッキンにこすれ跡が見られたものの、割れ等の損傷はなかった。
その後、当該配管のフランジ部のパッキンを取り替え、復旧した。
○原 因
復水脱塩装置には、使用済みの樹脂を脱塩塔から再生塔に移送し、再生する作業の中で、再生塔に温水(約33℃)を循環させる工程があり、その際、当該配管は前後弁により締め切られた状態にある。
調査の結果、原因は、この工程において温水配管からの熱が当該配管内の水に伝わり、当該配管内の水が加熱され、体積膨張して圧力が上昇し、当該配管のフランジ部のパッキンを押し出して漏えいしたものと推定される。
○対 策
当該配管に温水配管からの熱が影響しないよう、当該配管と温水配管の合流点を離すなど、配管のルート変更を行った。対策後、圧力および温度変化を確認した結果、共に上昇は認められなかった。

4.伊方1号機 原子炉補機冷却海水系統配管フランジからの漏えいについて
○事 象
5月1日17時30分頃、第21回定期検査中の伊方1号機において、原子炉補機冷却海水系B系統の配管フランジの点検工事を行っていたところ、作業員が誤って運転中のA系統の配管フランジのボルトを緩めたため、当該フランジより海水が漏えいした。このため、点検中であったB系統を復旧し、当該フランジのパッキンを取り替え、漏えいのないことを確認した。
○原 因
調査の結果、 |
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作業リーダから作業当日に作業内容の説明を行っていたが、A系統の配管フランジを用いて、口頭のみの説明であったため、個々の作業員はB系統が作業対象であることについて失念するか、または認識が薄かった |
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作業員は、配管フランジの吊具がA系統のフランジの上部にあったことから、A系統が作業対象であると思い込んだ |
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作業要領書の図面および配管フランジに、配管の系統表示およびフランジ番号の表示がなかった |
ことから、誤ってA系統の配管フランジを点検したものと推定される。 |
○対 策
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「ワンポイントレッスン」により、 |
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作業責任者等が作業員に作業を任せる場合には作業対象等の作業内容を示した図面等を用いて確実に指示すること |
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作業内容の説明は、原則、作業対象機器で行い、やむを得ず作業対象でない機器を用いて説明する際は、作業対象機器を間違わないよう注意が必要であること |
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を所内関係者に周知した。 |
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原子炉補機冷却海水系統の今定検の作業対象については、分解前にフランジ番号を明確に表示した。今後、配管に系統名、フランジ番号を表記していくこととする。また、2号機、3号機についても同様の対策を行う。 |
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原子炉補機冷却海水管の点検作業要領書について、配管図に系統名、フランジ番号を明記するとともに、片系統は通水中であるという注意事項を追記した。 |
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今後とも、これらの教訓や知見を風化させないよう、関係者の意識の高揚に努め、ヒューマンエラーの再発防止に継続的に取り組んでいく。 |
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5.伊方3号機 総合排水処理装置排泥ポンプ出口配管からの漏えいについて
○事 象
5月15日9時30分頃、通常運転中の伊方3号機において、総合排水処理装置の排泥ポンプA出口配管付近に漏えい跡があることを作業員が発見した。
点検の結果、排泥ポンプA出口配管のフランジ溶接部近傍に貫通穴が2箇所認められたため、当該配管の取り替えを行い、漏えいのないことを確認した。
○原 因
当該配管内部を確認したところ、溶接部近傍以外については、汚泥の一部が配管内に付着して被膜を形成し、配管の減肉はなかったが、貫通穴のある溶接部近傍については、被膜が形成されておらず、腐食による減肉が認められた。
このことから、原因は、溶接部近傍の配管径の絞られた部分が、内部流体の流速が速いため、汚泥による被膜が形成されず、流体中の塩分により経年的な腐食が発生し、貫通したものと推定される。
○対 策
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当該配管の溶接部近傍においては、内部流体の流速による影響を考慮して配管内径
(約21mmから約27mm)および肉厚(2.9mmから3.4mm)を変更した。 |
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排泥ポンプB側出口配管についても、同様の新品に取り替えを実施した。 |
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なお、当該系統配管については、今後とも定期的なパトロールによる目視点検を実施し、必要に応じて補修を行うこととする。 |

6.伊方1号機 ほう酸注入タンク出口電動弁の不具合について
○事 象
5月16日18時5分頃、第21回定期検査中の伊方1号機において、原子炉補助建家内にある「ほう酸注入タンク出口弁」の液体浸透探傷検査を実施したところ、当該弁の弁体のシート部に割れが認められたことから、弁体を新品に取り替えた。
○原 因
調査の結果、 |
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シート部の割れが弁体と弁棒を接続する弁体吊部に発生していること |
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弁体吊部に弁棒の圧痕が発生していること |
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当該弁の作動時に生じたと思われる弁座との摺動傷が弁体に多数認められたこと |
から、定検中の系統隔離操作に伴い、当該弁を閉方向に増し締めした際、強く締め過ぎたため、弁体吊部近傍のシート部に過大な応力がかかり、割れが発生したものと推定される。
また、割れは、増し締めの運用を行っていた平成7年以前に発生したものと思われる。
(平成7年以降は、締め過ぎを防止する観点から、締め付け管理要領を取り決め、原則として、増し締めを行わない運用としている。) |
○対 策
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当該弁体について、剛性を高めた改良型弁体へ仕様変更を行った。 |
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改良型弁体は剛性が高く、通常の増し締め操作では弁体シート部が損傷することはないが、再度、関係箇所に締め付け管理要領について周知徹底を図った。 |

7.伊方3号機 総合排水処理装置逆洗ポンプ出口配管からの漏えいについて
○事 象
5月22日14時20分頃、通常運転中の伊方3号機において、総合排水処理装置の逆洗ポンプ出口配管付近より漏えいしていることを作業員が発見した。
点検の結果、当該配管のフランジ溶接部に貫通穴が認められたため、接着材により補修し、仮復旧した。その後、当該配管を取り替え、漏えいのないことを確認した。
○原 因
当該配管は、フランジに配管を差し込み、外面を溶接して製造しており、フランジの内周と配管の外周との間にすき間がある。このすき間に流体中の塩分による経年的な腐食が発生し、当該フランジ溶接部を貫通したものと推定される。
○対 策
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フランジの内周と配管の外周との間のすき間を溶接施工した配管フランジに取り替えた。 |
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総合排水処理装置のポンプや弁の分解点検に合わせて、類似箇所の点検を実施する。
なお、当該系統配管については、今後とも定期的なパトロールによる目視点検を実施し、必要に応じて補修を行うこととする。 |

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