平成17年1月28日
四国電力株式会社


伊方発電所1号機補助建家排気筒のひび割れの原因と対策について


 第22回定期検査中の伊方発電所1号機(加圧水型、定格電気出力56万6千キロワット)において、補助建家排気ダクトの点検口設置工事に伴い、点検口周辺の点検を行ったところ、平成16年12月23日、補助建家排気筒の水平ダクト部にひび割れがあることが確認されました。
 更に当該部の点検を行った結果、内面に12箇所のひび割れがあり、そのうち貫通しているものが4箇所確認されました。
本事象による環境への放射能の影響はありません。

(平成16年12月24日お知らせ済み)

 その後、ひび割れ近傍の浸透探傷検査を行うとともに鉛直ダクト部についても点検を行った結果、最終的に、水平ダクト部および鉛直ダクト部の接続鋼材や補強鋼材の断続溶接部近傍で長さ最大約400mmまでのひび割れが19箇所、水平ダクト部と鉛直ダクト部との接続鋼材の全周溶接部(シール溶接部)で長さ約2,730mmの腐食したひび割れが1箇所確認されました。また、構造が類似する格納容器排気筒についても点検を行った結果、補助建家排気筒と同様の接続鋼材シール溶接部で、長さ約1,370mmの腐食したひび割れが1箇所確認されました。

 このため、ひび割れ箇所の詳細調査を行った結果、本事象の原因は、
  補助建家排気筒の断続溶接部近傍のひび割れは、排気ファンの運転に伴いダクト曲がり部の後流部で圧力変動が発生してダクトが振動し、応力が集中する形状の断続溶接部において疲労限を超えたため、溶接部近傍のステンレス鋼板外面より割れが発生し進展した
  補助建家排気筒および格納容器排気筒のシール溶接部のひび割れは、ダクト上面の接続鋼材断続溶接部の隙間から浸入して滞留した雨水により腐食が発生し、内外面を貫通するひび割れが発生した
ものと推定されます。
 
 以上のことから、今後、以下の対策を実施いたします。
  補助建家排気筒および格納容器排気筒の水平ダクト部については、補強鋼材を追設し、振動を低減させた構造のものに取替えます。また、補助建家排気筒の鉛直ダクト部については、ひび割れ発生箇所を撤去し、同様のステンレス鋼板で復旧するとともに、振動低減を図るための振動抑制用サポートを追設します。
  補助建家排気筒および格納容器排気筒の水平ダクト部について、屋外にある断続溶接部間の隙間に、雨水による腐食防止を図るため、シール材を塗布します。また、定期検査時に外観点検を行う等排気筒の点検要領を定め適切に管理します。

 なお、伊方発電所2,3号機の排気筒については、1号機と構造が異なり、同様の事象は発生しないものと考えられますが、念のため可能な範囲で点検を行った結果、異常は認められませんでした。


添付資料 「伊方発電所第1号機 補助建家排気筒のひび割れについて」の概要
別添−1 伊方1号機 補助建家排気筒および格納容器排気筒概略系統図 [PDF 31.5KB]
別添−2 伊方1号機 補助建家排気筒のひび割れについて(1/2) [PDF 170KB]
別添−3 伊方1号機 補助建家排気筒のひび割れについて(2/2) [PDF 729KB]
報告書 伊方発電所第1号 機補助建家排気筒のひび割れについて
 
以 上

添付資料

「伊方発電所第1号機 補助建家排気筒のひび割れについて」の概要


1.事象発生の状況
 
 伊方発電所第1号機(定格電気出力566MW)は、第22回定期検査において、補助建家排気筒(以下、「A/B排気筒」という。)の点検口設置工事に伴い、点検口周辺の内部点検を行ったところ、平成16年12月23日15時にA/B排気筒水平ダクト部にひび割れを確認した。
 その後、更に当該部近傍の点検を行った結果、翌24日10時、内面に12箇所のひび割れがあり、この内、4箇所について貫通していることを確認した。
 なお、本事象による周辺環境への放射能の影響はなかった。
 
2.状況調査
 
   A/B排気筒水平ダクト部の内外面目視観察および浸透探傷検査(PT)を実施した結果、15箇所でひび割れが認められた。これらは、接続鋼材等の断続すみ肉溶接部(以下、「断続溶接部」という。)の近傍に14箇所()、水平ダクト部と鉛直ダクト部の接続鋼材全周シール溶接部(以下、「シール溶接部」という。)に1箇所()であり、この内、4箇所()の貫通または漏えいが認められた。
 ひび割れ()の長さは、最小で約20mm、最大のもので約400mmであり、ひび割れ()は、シール溶接部に沿った、上面約2,500mm、側面約230mmの連続した長さのものであった。
 ひび割れの外面周辺には腐食が認められ、また、ひび割れ範囲と著しく腐食している範囲がほぼ一致していた。
     
   A/B排気筒鉛直ダクト部について、テレビカメラ等による内外面目視観察を行った結果、補強鋼材の断続溶接部近傍で5箇所のひび割れ()が認められた。ひび割れの長さは、最小で約60mm、最大のもので約150mmであった。
 なお、ひび割れが認められた断続溶接部近傍のPTを行った結果、新たに有意な指示は認められなかった。
     
   格納容器排気筒(以下、「C/V排気筒」という。)水平ダクト部の内外面目視観察を行った結果A/B排気筒シール溶接部とほぼ同じ場所に、シール溶接部に沿った上面約1,370mmのひび割れ1箇所が認められたが、当該箇所の漏えいは確認されなかった。
 また、ひび割れの外面周辺に腐食が認められ、ひび割れ範囲と著しく腐食している範囲がほぼ一致していた。
 なお、C/V排気筒の他の部分については、ひび割れは認められなかった。
     
3.詳細調査
 
 3.1 A/B排気筒
 
  (1)  設計および製作・施工調査結果
   
水平ダクト部の補強鋼材の間隔を確認した結果、約1,400mmであり、他の部位より間隔が長かった。調査の結果、当初設計では、外周コンクリート貫通部内に補強鋼材が取り付けられる予定であったが、コンクリート貫通部が狭隘であったことから、現場設置の段階で補強鋼材のないものを使用していた。
設計、製作、その他の施工状況には問題はなかった。
     
  (2)  材料調査
    排気筒鋼板、接続鋼材、補強鋼材、溶接金属の材料には問題はなかった。
     
  (3)  金属調査結果
     断続溶接部近傍のひび割れ()については、
   
溶接端部の外表面を起点とした金属組織の流れが認められたこと
破面は粒内割れであり、外面側からの進展を示すビーチマーク状模様およびオーステナイト系ステンレス鋼の低応力高サイクル疲労破面に特有の組織状模様が確認されたこと
ストライエーション、羽毛状の組織や材料欠陥等は認められなかったこと
 
  から、溶接端部を起点とした外面側からの低応力高サイクル疲労割れによるものと推定される。
     
 
  また、シール溶接部のひび割れ()については、
   
破面には、腐食の際に現れる滑らかな凹凸が不規則に認められたこと
 
  から、腐食がシール溶接部において発生し、内外面を貫通するひび割れに至ったと推定される。
     
  (4)  溶接部残留応力測定結果
     断続溶接部の健全部には、降伏応力程度の残留応力が発生し得ることを確認した。
     
  (5)  運転・保守履歴調査結果
     補助建家排気ファンの排気風量等の運転パラメータを確認した結果、問題のないことを確認した。保守履歴からフレキシブルジョイントやダクト等の取替実績がないことを確認した。
 また、当該部が狭隘であることから、十分な外観点検が実施されていなかった。
     
  (6)  振動計測結果
     A/B排気筒の振動計測(変位の両振幅)を行った結果、ひび割れが認められた水平ダクト部上面は最大で1,800μm、鉛直ダクト部正面は最大で1,300μmであった。
 また、ひび割れの認められなかった箇所の振動は小さかった。
 
  3.2 C/V排気筒
  C/V排気筒のひび割れについて詳細調査を実施した結果、A/B排気筒シール溶接部のひび割れ()と同様、腐食によるものであることが確認された。
 
4.損傷要因の推定
 
  4.1 断続溶接部近傍のひび割れ
  断続溶接部近傍のひび割れは、溶接端部を起点とした低応力高サイクル疲労によるものと考えられることから、A/B排気筒の構造上の特徴等について検討するとともに、溶接端部についての疲労評価を実施した。
 
  (1)  構造上の特徴等
     排気筒は、大容量の空気を排気するため、設計風速(約20m/秒)を大きくし、大口径(2,500mm×1,000mm)で薄肉(板厚1.5mm)のステンレス鋼鈑の構造としており、C/V排気筒(口径:1,500mm×1,000mm)に比べ剛性が低いものとなっている。また、ステンレス鋼板に補強鋼材等を断続溶接により取付け、薄肉構造を補強するとともにステンレス鋼板の振動も抑制している。このため、断続溶接部は、外面に溶接残留応力が発生するとともに、応力集中箇所となる。
 また、ひび割れが発生した箇所については、
   
水平ダクト部は、曲がり部の後流部であり、圧力変動が発生しやすく、また補強鋼材間隔が長く振動しやすい
鉛直ダクト部は、短い間隔で連続した曲がり部の後流部であり、圧力変動が増加し振動が大きくなりやすい
 
  ことから、水平ダクト部および鉛直ダクト部とも振動が発生しやすい構造である。 
 なお、曲がり部からダクト短辺長さの5倍程度離れれば圧力変動は小さくなるとされている。
 
  (2)  疲労評価
     対象ダクトを板要素でモデル化して振動評価を行い、詳細調査で求めた硬度測定データを用いて疲労評価した結果、断続溶接部に発生すると推定される変動応力は、疲労限を上回り、疲労破壊が発生することが確認された。
     
  4.2 シール溶接部のひび割れ
  シール溶接部のひび割れは、腐食によるものであると考えられることから、環境、材料・構造および保守状況について検討を実施した。
   
 
環   境 1号機格納容器外周コンクリートは天井開口型であり、雨天時には当該部が濡れる状態となる。また、当該部は排気筒の最下部に位置することから、日光も当たらず乾燥しにくい。
材料・構造 接続鋼材部は炭素鋼であり、環境条件により腐食しやすい。また、当該シール溶接部の外面は断続溶接、内面は全周シール溶接であり、雨水が浸入し滞留する構造である。
保守状況 接続鋼材部は、通常は立入らないことや当該部が狭隘であることから、十分な外観点検が実施されていなかった。
     
5.推定原因
  今回のA/B排気筒およびC/V排気筒のひび割れ事象は、以下の2つの原因によるものである。
     
  (1)  断続溶接部近傍のひび割れ
     ダクト曲がり部の後流部については、風の流れの乱れにより、圧力変動が発生しやすく、水平ダクト部は補強鋼材間隔が長く振動が大きくなりやすい。また、鉛直ダクト部は、短い間隔で連続した曲がり部の後流部であり、圧力変動が増加し振動が大きくなりやすい。
 このため、溶接残留応力があり、応力が集中する形状である断続溶接部において、変動応力が疲労限を超えたことから、ステンレス鋼板外面よりひび割れが発生し進展したものと推定される。
     
  (2)  シール溶接部のひび割れ
     排気筒は雨天時に濡れる構造であることから、雨水が断続溶接部の隙間から侵入し、滞留した雨水により腐食が発生し、腐食がシール溶接部を進展したため、内外面を貫通するひび割れが発生したものと推定される。
     
6.対 策
     
  (1)  A/B排気筒およびC/V排気筒の水平ダクト部については、補強鋼材を追設したものに取替える。
 また、A/B排気筒鉛直ダクト部については、ひび割れ発生箇所を撤去し、同種・同材のステンレス鋼板で復旧するとともに、振動低減を図るための振動抑制用サポートを追設する。
     
  (2)  A/B排気筒およびC/V排気筒の水平ダクト部について、屋外部にある断続溶接部間の隙間は、雨水による腐食防止を図るためシール材を塗布する。
 また、定期検査時に外観点検を行う等排気筒の点検要領を定め適切に管理する。
     
7.2,3号機の対策
     
  (1)  2号機A/B排気筒およびC/V排気筒
     
   
 振動による損傷が認められた水平ダクト部および鉛直ダクト部はいずれも補強鋼材の間隔が1号機よりも短く、振動しにくい構造となっており、外観点検を実施したが、異常は認められなかった。
 なお、外周コンクリート貫通部は狭隘で外側からの点検が困難なため、次回定検時に外観点検を行う。また、類似個所以外の原子炉格納容器に沿った緩やかな曲がり部については、念のため、次回定検時に外観点検を行う。
 腐食損傷が認められた水平ダクト接続鋼材部は外周コンクリートに囲まれて雨水が浸入しない環境となっており、外観点検を実施したが、異常は認められなかった。
     
  (2)  3号機A/B排気筒およびC/V排気筒
     
   
 振動による損傷が認められた類似箇所は各排気筒ともダクト配置、形状、板厚等が1号機とは異なり、強度が高い構造となっており、外観点検を実施したが、異常は認められなかった。
 なお、C/V排気筒の建屋貫通部は狭隘で外側からの点検が困難なため、次回定検時に外観点検を行う。また、類似個所以外の外周コンクリートに沿った緩やかな曲がり部についてはダクト形状が丸形となっており、角ダクトのような振動による損傷は考えられないが、念のため、今後排気筒の補修塗装を行う際に外観点検を行う。
 腐食損傷が認められた接続鋼材部は雨水が浸入しないよう全て全周シール溶接となっており、外観点検を実施したが、異常は認められなかった。


以 上

別添−1 伊方1号機 補助建家排気筒および格納容器排気筒概略系統図 [PDF 31.5KB]
別添−2 伊方1号機 補助建家排気筒のひび割れについて(1/2) [PDF 170KB]
別添−3 伊方1号機 補助建家排気筒のひび割れについて(2/2) [PDF 729KB]


伊方発電所第1号機補助建家排気筒のひび割れについて

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 ・ 報告書 本文 [PDF 54.6KB]
 ・ 上記報告書の添付資料 1〜10 [PDF 1.5MB]
 ・ 上記報告書の添付資料 11〜14 [PDF 3.0MB]
 ・ 上記報告書の添付資料 15〜22 [PDF 1.5MB]


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