金谷 節子 氏
入院期間が短縮する傾向にあるなか、嚥下障害を持つ患者は摂食訓練半ばで退院せざるをえない状況がある。したがって、地域全体で退院後のフォローを続けることが不可欠となる。すなわち、病院・施設・在宅、どこにいても、誤嚥によるリスクを回避しつつ、「最期まで口から食べる」ための社会システムを構築することが緊急の課題となっている。現在、広く認知された嚥下食(※)であるが、大きさ・弾力性・とろみといった項目に明確な基準がなく、各人が独自のレシピで調理・提供しているのが現実だ。
(※) | 嚥下食とは、嚥下障害を持つ患者向けに、誤嚥を防ぐために適度な粘度(とろみ)をつけるなどの工夫を加えた食事のこと。 |
嚥下障害を起こしている患者は、摂食が十分に行えず低栄養状態に陥りやすいといった問題がある。その改善のためには、咀嚼・嚥下機能低下のレベルに応じて食形態を調整し、提供することが必要である。また、チューブを介して栄養を受けている患者に対して嚥下訓練を施し、機能回復を行うことは、人間としての尊厳をもたらすことにもつながる。
そのためにはいくつものステップがあり、直感的に理解できる表現にまとめたものが図1の「嚥下食ピラミッド」である。
レベル0~2(赤~濃いピンク)の嚥下訓練食から始まり、レベル3の嚥下食(薄いピンク)、レベル4の介護食(黄)、そしてレベル5の普通食(青)に至る。
図1. 嚥下食ピラミッド
この「嚥下食ピラミッド」は、2004年、我が国において最も臨床経験がある「聖隷三方原病院の五段階による嚥下食」をもとに作られた。その時点で既に100万食以上を提供した実績があり、まさに臨床に裏付けされた食事と言える。