パワーアップ講座~プロフェッショナルのミカタ~

飲食業の本質を見失うな

神村 護 氏

飲食企業に入社した22歳から38年間、私は一貫して飲食業に関わり、仕事をしてきた。この間、飲食企業の社員、飲食店の経営者、そして飲食専門の店舗プロデューサーと仕事上の立場は変わっていったが、飲食業ひと筋という点では何も変わっていない。一つの業界で30年以上も仕事を続けていれば当然、色々な出来事があるものだ。それも私の場合、良い時と悪いときの落差が、少々大きすぎたかもしれない。
若いころにはちょっとした青年実業家を気取っていた時期もあったが、それも長くは続かず、奈落の底に突き落とされた気分もいやというほど味わった。実にお恥ずかしい話だが、事実なのだから仕方ない。
しかし、今思えば、まだ働き盛りの年齢の時に両極端の境遇を体験したことが、その後の私の大きな糧になっていると思う。様々な体験をした中で、飲食店の本質についていくばくかの確信を得ることができたので、その内容をぜひともここでお伝えしたい。

しかし飲食業の本質を語る前に、お話ししておきたいことがある。私が経営者として、神戸で3つの店舗を手掛けていた時のことだ。1店目は、深夜・早朝まで営業するパブ業態の「セカンド・チャンス」。飲食企業の社員時代に培った実体験を元に店づくりをし、独立後最初に作った店だ。2店目はその3年後、三宮駅前にオープンした「バスケットボール・クラブ」というカフェ、最後の1店は神戸一の繁華街・トアロードに開いた「チーズケーキ・コンフェクショナリー」というテーマ・レストランである。
私は今でもこの3店舗の店づくりについて、ビジネスとしては間違っていなかったという確信を持っている。時代に合った業態発想を打ち出すことができ、1店目と2店目は予想を遥かに超える大ヒットとなった。だが3店目のオープン後に待っていたのは倒産という挫折。倒産に至った原因は、単に3店目の失敗にあるのではない。未熟な経営者だった私の、決定的な思い違いにあったのだ。
成功に溺れて店という現場から徐々に足が遠のき、代わりに増えたのは視察と称した海外旅行などのスケールを間違えた遊びの数々。それが招いたのは優秀な従業員たちの離反だった。結果店は崩壊し、お客さまも失うこととなったのである。

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