伊方発電所3号機湿分分離加熱器逃がし弁損傷(1996年)

1.経緯

伊方3号機(加圧水型、定格出力89万kW)は、第1回定期検査のため、1996年1月14日20時33分からプラントの停止作業を開始していましたが、21時32分に湿分分離加熱器B号機逃がし弁が開いたため、2次系の蒸気が外部に放出され、異音が発生しました。
なお、定期検査のためのプラント停止操作中に本事象が発生しましたが、停止操作に支障はなく、原子炉は安全に停止しました。また、放出されたのは2次系の蒸気であり、環境への放射能の影響はありませんでした。
その後、連絡通報の改善、徹底した原因究明と再発防止対策について、全力を挙げて取り組んできた結果、関係当局のご理解もいただき、5月10日発電を再開しました。

[湿分分離加熱器]
高圧タービンで使用した蒸気を低圧タービンでもう一度使えるように、蒸気の湿分を取り除き、温度を上げる設備。

[湿分分離加熱器逃がし弁]
湿分分離加熱器の圧力が高くなった時に、蒸気を外へ逃がし圧力を下げる設備。

[ドレントラップ]
配管内の蒸気が凝縮されてできた水(ドレン)を自動的に排出する装置。

2.点検・調査結果

  • 湿分分離加熱器B号機逃がし弁および配管支持装置が損傷していました。
  • 逃がし弁につながる配管のドレントラップ(凝縮水排水装置)が、100%出力運転中には作動しない仕様のものが設置されていました。
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3.原因

  • 100%出力運転中には作動しない仕様のドレントラップが設置されていたため、逃がし弁配管内にドレンが溜まっていた。
  • 原子炉停止のため出力降下に伴って、逃がし弁配管内の圧力が下がったことにより、ドレントラップが作動し、ドレンが排出され始めた。
  • ドレンの排出に伴い、逃がし弁配管内のドレンの水位が水平部まで下がり、冷たいドレンが蒸気を巻き込み、急激な蒸気凝縮による圧力変動が繰り返し発生した。
  • この圧力変動により、逃がし弁配管に水平方向の力が発生し、配管支持装置が折損した。
  • 配管支持装置の折損に伴い、配管の振動が大きくなり、逃がし弁が損傷して蒸気が放出した。

4.対策

  • 品質管理の充実・強化
    日常巡視点検の充実やプラントメーカーに対する指導強化などを行い、品質管理体制の充実・強化をはかっています。
  • 総点検の実施
    伊方3号機の設備全般について、不適切な仕様の機器があるかどうかの観点から総点検を実施し、他の設備には問題ないことを確認しました。
    〔復旧工事等の実施〕
    • ドレントラップを適正なものに取り替えるとともに、損傷した逃がし弁および配管支持装置を取り替えました。
    • 逃がし弁配管等逃がし弁周辺の設備については、損傷は認められなかったが、念のため取り替えました。
    • 防音対策のため、損傷した逃がし弁等の周囲に防音壁を設置しました。

5.主な連絡通報の改善点

  • 連絡当番者の常時配置
    より迅速な連絡通報を行うため、宿直制度を導入し、発電所の連絡当番者を夜間にも常駐させることとしました。
  • 関係機関への一斉連絡通報設備の導入
    社外への連絡通報を、より迅速かつ確実に行うため、一斉同時送信FAXを設置しました。
  • 広報車等による地域の皆さまへの広報
    伊方発電所周辺の皆さまに対して迅速な広報が行えるよう、当社保有の広報車を準備するなど、地域広報を実施する体制を充実しました。
  • 発電所職員の訓練や教育等の充実
    連絡通報・危機管理に関する教育、研修の充実や様々なケースを想定した連絡通報訓練等を行っています。