パワーアップ講座~プロフェッショナルのミカタ~

電気が導くサクセス

神村 護 氏

ポイント3.電化厨房が切り拓く業態開発の可能性

◎電化厨房が切り拓く業態開発の可能性

私はこの10数年間、あらゆる場所で電化厨房のメリットを説き続けてきたが、最近はこんな声もよく耳にするようになった。
「電気厨房機器の法定耐用年数は燃焼式機器と同じ6年だが、実質的には10年程度使用可能だ。しかも燃焼式機器と比べ、故障が圧倒的に少ない。飲食店経営者は厨房にこそ重点的に資金を投入すべき」
「飲食店の住宅街立地には、近隣への煙や臭いの害を極力少なくする必要がある。そのために電気厨房機器の研究は、飲食店経営者にとって重要なテーマになってきている」
「単に燃焼式の厨房機器を電気厨房機器に取り替えるだけではメリットが小さい。だが初めから電化厨房を前提に設計すれば、大きなメリットが得られる」
まさにその通りだ。

厨房のイメージ

確かに価格の下がった機器が増えたとはいえ、電化厨房のイニシャルコストが高いことは否定できない。しかしそんな目先のことではなく、飲食店ビジネスの本質的なあり方を考えれば、飲食店の設計は客席よりもまず飲食店の心臓部である厨房に投入すべきだ。飲食店は顧客に高い付加価値をリーズナブルに提供できてはじめて繁盛できるが、それには何より十分な厨房の機能が前提条件となる。おいしい料理を安定して作ることも、お客を待たせず素早くサービスすることも、厨房が正しく機能しないと成り立たない。

ただし厨房の投資も、一部の機器を電気厨房機器に取り替える方法では効果は薄い。既存設備にプラスして電気設備を入れるため、ムダな部分が多く結局は高いものにつく。それならば思い切って最初から、電化厨房を前提にした設計(あるいは設計変更、改装)を考えるべきだ。
これまで述べたように、そこから経営環境の激変に対応するための経営革新の道も見えてくる。

繁盛のためには・・・顧客に高い付加価値をリーズナブルに提供することが必要
それは、飲食店の心臓部である厨房の機能が充分なものであることが前提条件

電化厨房の特徴とメリットは、「安心・快適」「経済的」「操作性」「効率性」そして「時間短縮」の、5つのキーワードに集約される。 このキーワードが持つ意味は既に見てきたが、それは「店舗調理」「ローコストオペレーション」「労働生産性」「人材」「業態開発」という、飲食業が抱える課題の5つのキーワードと、まさに一対をなしているのだ。

あえて極論すれば、全ての飲食店経営者が、電化厨房の知識、電気厨房機器を活用した出店ノウハウや業態開発の手法を身につけなければならない時代が、すでに到来しているということだ。

●電化厨房の特徴とメリット

  • 安心・快適
  • 経済的
  • 操作性
  • 効率性
  • 時間短縮

飲食店経営・飲食企業経営者において、収益を生み出す源は人材であり顧客だ。働く人に気持ちよく、近隣や地域と密着して、顧客を満足させる。そして経営者も確実に儲かる仕組みを考えることが、今ほど重要になっている時代はない。

限られた資本と立地条件、店舗空間の中で労働生産性を高め、ローコストオペレーションの仕組みを構築するには、旧来型の常識にとらわれない斬新な発想と知恵が必要だ。そして既に私たちは、知恵と科学が生み出したオール電化厨房を、いつでも手にすることができるのである。

電気エネルギーが単なる熱源、動力ではないことをお分かりいただけたと思う。繰り返すが、エネルギーを切り口に飲食店を見直すと、新たなビジネスチャンスが見えてくる。

もちろん切り口は多様だ。例えば「システム化」の視点から電気エネルギーの利点を考えよう。制御が容易な電気を使えば、厨房のシステム化を追求しやすい。また電気厨房機器は、経験とカンに頼りがちな燃焼式厨房機器と違いデジタル管理が可能なため、調理工程をマニュアル化しやすい。熟練を必要としない点で、そこには確かな業態開発のヒントやビジネスチャンスがある。厨房空間を立体的に使えるという点では、プロの料理人の本物の技を効率的に発揮し、おいしい料理を美しく盛りつけ、なおかつ低価格で楽しく提供する道も拓ける。ここにも業態開発のヒントがあるわけだ。

◎「目的」と「方法」を明確にする

ただし電化厨房を導入すれば、それだけで飲食店経営の様々な問題が解決するわけではないので誤解のないように。肝心なのは、電化厨房導入についての基本的な考え方と進め方だ。

電化厨房の導入を考える上で最も重要なことは「目的」と「方法」の明確化だ。「何のために導入し、いかに使うのか」この自己検証を必ず、十分に行っていただきたい。人間が使う以上、夢の万能機械など存在しない。リスクのない機械もまた存在しないのだ。

「目的」と「方法」の明確化 = 何のために導入し、
いかに使うのか

私は飲食業が抱える課題を「店舗調理」「ローコストオペレーション」「労働生産性」「人材の確保と育成」そして「業態開発」という5つのキーワードで表現し、電化厨房はこれらの解決に役立つと述べてきた。しかし個々の飲食店が抱える個別具体的な課題は様々である。例えば、ひと口に人手不足といっても、それが熟練料理人なのかフロアスタッフなのかでは解決策はまったく違う。

要は自店が抱える課題や問題点とその原因を分析し、経営資源(人、モノ、金、情報等)を考慮しつつ、具体的な解決のためのプロセスを描き、実験と検証を繰り返すことが重要なのである。

自店が抱える課題や問題とその原因を分析
経営資源(人、モノ、金、情報等)を考慮
具体的な解決のためのプロセスを描く
実験と検証を繰り返す

電化厨房導入のための第2の要件は、厨房機器に対する固定観念を改めるということだ。例えば電化厨房に抵抗を感じる人でも「冷蔵庫や製氷機は電気製品で」と言えば「そんなものはとっくに導入済み」と答えるだろう。私はそんな人に質問したい。「ではあなたはなぜ、冷蔵庫や製氷機を電気製品にしたのですか。それは据置型ですか。それともキャスター付の移動可能なものですか」と。私の経験では、この質問に明確な答えを出せる経営者や料理人は、それほど多くはないはずだ。失礼だが単純に「冷蔵庫や製氷機は電気製品が当たり前」と使っている人が大半だろう。

だから「厨房とはこんなもの」というイメージにとらわれ、冷蔵庫や調理機器が移動できることで生まれる利便性や効率性など、思いもよらない。それが現実なのである。しかも従来の燃焼式調理機器で技術を習得した料理人には「電気加熱調理機器は値段が高いくせに火力は弱く、立ち上がりも遅い」といったイメージが根強くある。そのため、なおさら電化厨房は敬遠されてしまうのだ。

率直に言わせていただけば、こうした現実は実際に厨房を使う料理人の勉強不足による問題点の把握力の弱さであり、経営感覚の欠如を物語るものだ。もちろんそれは、経営者自身の力量不足の結果とも言い替えることができるのだが。

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