パワーアップ講座~プロフェッショナルのミカタ~

電気が導くサクセス

神村 護 氏

ポイント4.失敗しない電化厨房導入プロセス

◎失敗しない電化厨房導入プロセス

では具体的に電化厨房の導入はいかに進めるべきか。まず導入に当たっての問題点を洗い出してみよう。

設計のイメージ

一般に飲食店の厨房設計やレイアウトを、店舗設計者が行うことはない。といって、経営者や料理人が自ら基本となる図面を引くことも極めて希だ。では誰がその役割を担っているのかといえば、厨房機器メーカーである。
そのため電化厨房でも、電気調理機器を既存の燃焼式調理機器の代替品と位置付けてしまい、その結果単に従来の機能を代替させる配置・レイアウトになることが少なくない。

これでは電化厨房のメリットを十分に享受することなどできるはずがない。なぜなら電化厨房の本当のメリットをまったく無視しているも同然だからだ。電化厨房の導入で一番重要な点は、誰が厨房の基本コンセプトとスペックを決め、誰が使う調理機器を選択したかということだ。これまでの我が国での導入事例では、次の3つのケースがある。第1は料理人、第2は経営者、そして第3は厨房プランナー(厨房メーカーの社員が多い)だ。

<3つのケース>
料理人の場合   経営者の場合   厨房プランナーの場合

誰が担当するかがなぜ重要なのかというと、誰がやるかで結果が異なってしまうからだ。

<それぞれのケースで考えられるのは・・・>
(1) 料理人の場合
  これまでの経験則に基づいて、自分にとっての使いやすさを基準に選択する。
(2) 経営者の場合
  予算を基準にさらなるローコスト化を求め、足りないところは料理人の技術で埋め合わせればいいと考えやすい。
(3) 厨房プランナーの場合
  求める機能を上回る高機能・高価格の機種で、厨房を埋め尽くされてしまうこともある。

厨房は飲食店の業態や収益力を左右するポイントだ。それにもかかわらず、このように自分の立場や事情を優先する選択者の、思惑のままに厨房ができあがるとどうなるか。経営がつまづき、何よりもお客さまに迷惑をかけることにもなりかねない。目的と方法のコンセンサスが曖昧なまま三者の思惑の妥協で成立したような厨房ではなおさら、その危険性が高い。

そこで、料理人・経営者・厨房プランナー以外の、第4の選択者が必要となる。それは、欧米では一般的な、経営コンサルタントや店舗プロデューサーの介在である。自分でいうのも何だが、コンサルタントや店舗プロデューサーは優秀な経営者ではなく、誰よりも多くの事例を知っている人たちのことだ。
飲食業界の現状を見れば、彼らを軸にして冷静かつ大局的に意見調整を図ることが、電化厨房の導入成功の早道といえるだろう。もちろん経営者があらかじめ店のコンセプトと運営方針を明確に提示することが、最も重要なことは言うまでもない。

私の経験から電化厨房の設計の流れを概括すると次のようになる。

まず最初に厨房の基本コンセプトを決める。テーマは労働環境の改善と作業効率のアップ、省スペース化、調理時間の短縮がメインだ。
次は基本スペックの決定。業種業態や客席数、営業時間、料理メニュー、サービス方法といった基本条件を詰めながら、最大提供能力(食数)や必要な厨房面積、厨房内作業人員数も決定していく。これらが決まってはじめて、厨房機器の選択と厨房レイアウトに入ることができる。

機器選定のポイントは、料理メニューの内容と最大提供能力だ。将来的なメニュー変更などを見越し、機器の機能キャパに余裕を持たせるという考え方もあるが、必要以上の機能にとらわれることは結局、ムダな投資になりやすい。

レイアウトの基本は、第1に作業のし易さと効率性。第2は、調理から盛りつけに至る動線とサービス動線を、厨房と客席の位置関係を考慮して、最もスムーズに結びつけることだ。下げ動線も同様で、ダストテーブルと食器洗浄機の位置を、サービス動線と分けることが大切になる。
この流れの中で電気厨房機器のメリットを生かすには、次のポイントを十分に考慮してほしい。

1. 設備に応じた配線や電源容量の事前確保:
2. 空調と排気装置の適正配置:
3. 常に立ったまま作業できることを基本とする:
4. 厨房機器は平面配置よりも立体配置を重視(厨房のコンパクト化に通じる):
5. 厨房機器の設置方法は、床や壁面を清潔に保ちやすい方式を優先する(ベースマウント方式にし床面との隙間を無くしたり、営業内容に合わせて移動できるようキャスター付きにするなど):

(「電気が導くサクセス」おわり)

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