原子力発電
原子力発電は、
発電時に二酸化炭素を出さないクリーンな発電方法ですが、
一方で放射性物質を閉じこめるための
厳しい安全管理が必要です。
原子力発電について調べてみましょう。
原子力発電のしくみ
原子力発電は、原子炉の中でウランが核分裂反応を起こすときに出す熱を利用して水を熱し、そこから得られた蒸気の勢いでタービン・発電機を回転させて電気をつくっています。蒸気の力を使って電気をつくるというしくみは、火力発電と同じです。

日本で使われている
商業用の原子炉には
「加圧水型」と
「沸騰水型」の、
2種類があるのだ。
加圧水型原子炉
加圧水型原子炉は、原子炉でつくった熱水を蒸気発生器に送り、別の水を加熱して高温の蒸気に変えます。その蒸気の力でタービン・発電機を回転させ、電気をつくります。

四国電力の伊方発電所は、
この方法で発電している。
沸騰水型原子炉
原子炉で水を沸騰させて高温の蒸気をつくります。その蒸気の力で直接タービン・発電機を回転させ、電気をつくります。

原子力発電の特ちょう
原子力発電には、次のような特ちょうがあります。
- 原子力発電の得意なこと
- 少ない燃料で、たくさん発電できる。
- 発電するときに二酸化炭素を出さない。
- 原子力発電の問題になること
- 放射性物質をあつかうため、厳しい管理が必要。
- 使い終わった燃料などから、放射性廃棄物が出る。
少ない燃料でたくさんの電気をつくることができ、長時間一定の量の電気をつくり続けることができるので、ベースロード電源として、私たちのくらしを支えています。
また、発電時に二酸化炭素を出さないため、再生可能エネルギーとともに地球温暖化対策にも役立っています。
四国にある原子力発電所

伊方発電所(愛媛県伊方町)
ウランの核分裂反応
原子力発電では、燃料のウランが核分裂という反応を起こすときに発生する熱エネルギーを利用して水を蒸気に変えています。
原子の構造

あらゆる物質は、原子という小さなつぶが集まってできている。原子は、原子核(陽子と中性子の集まり)の周りを電子のつぶが回る構造をしている。
核分裂反応

ウランに中性子がぶつかると、ウランが分裂して中性子が飛び出し、大きな熱エネルギーが出る。飛び出した中性子は別のウランにぶつかり、次々に核分裂が起こる。
原子力発電は、
火力発電のように、
燃料を燃やしている
わけではないんだな。
原子力発電所の安全対策
原子力発電所では、安全を第一に考え、定期的に機器の点検や検査をして性能を確認しています。また、万一、異常や事故などが起こっても安全が守られるように、何重もの安全対策をとっています。
安全確保の基本
- 止める
- 異常や事故などが発生したときや、大きな地震が起きたときは、自動的に原子炉が止まります。
- 冷やす
- 原子炉が止まった後に、燃料が高温になりすぎないように、原子炉を冷やします。
- 閉じこめる
- 放射性物質を外に出さないように、5重のかべで閉じこめます。
原子炉を安全に自動停止

伊方発電所では、所内に設置した地震計が震度5程度以上のゆれを感じると、すぐに制御棒が自動で燃料の間に入り、原子炉が安全に止まるしくみになっている。
安全を考えた5重のかべ
原子力発電所では、異常や事故が起こったときに、放射性物質が外に出ないように、5重のかべで閉じこめています。
放射性物質を閉じこめる5重のかべ

伊方発電所(加圧水型原子炉)の例
放射性物質は、
こんなに厳しく
ガードされているんだな。
伊方発電所の取り組み
発電所で働く人たちの技術力向上
四国電力の伊方発電所で働く人たちは、定期的に愛媛県松山市にある原子力保安研修所などで、発電所の安全を守るための訓練に取り組んでいます。
原子力発電所の安全を守るための訓練

原子力保安研修所(愛媛県松山市)

シミュレータを使った運転訓練。

蒸気発生器細管内部の傷を検査する訓練。

原子炉容器のふたをしめつけているボルトをしめたりゆるめたりする訓練。
伊方発電所の安全対策
伊方発電所では、福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こしてはならないとの思いで、さまざまな事態を想定した訓練を継続して行っています。また、設備面でも、以前からの取り組みに加え、福島での事故をふまえた安全対策を進めています。
地震に備えて
最大規模の地震のゆれに備えて
過去の地震や活断層(数千年ごとに地震を起こす可能性のある場所)などを十分調査し、発電所にとってより厳しい条件を設定して、最大規模の地震のゆれに備えている。
重要な建物は固い岩盤の上に直接建設
発電所の重要な建物は、地震があってもゆれにくい固い岩盤の上に直接建てている。

浸水に備えて
伊方発電所での最大の津波の高さは、津波が重なって大きくなるといった厳しい条件でも8.1mと想定している。海抜10mにある伊方発電所はえいきょうを受けないと考えられるが、想定外の浸水に備えて、水密扉(水を通さないとびら)の設置や、海水ポンプの浸水防止対策などを行っている。

大型水密扉(とびらの厚さ35cm)
電源を確保するために
万一、発電所内の電源がなくなったときに備えて、原子炉や燃料を冷やすために必要なポンプなどに使う電源をいくつも用意している。

空冷式非常用発電装置を高台に設置。

非常用ガスタービン発電機を高台に設置。

海抜95mの変電所からの配電線を整備。
安定的に冷却するために
原子炉や使用済燃料を冷やし続けるための方法をいくつも用意している。

非常時に原子炉などに水を送りこむための中型ポンプ車を配備。

使用済燃料プールの水が減ったときに、燃料に水をかける小型の放水砲を配備。
万一の重大事故に備えて

重大事故時の対応拠点となる緊急時対策所を設置。大きな地震のゆれにたえるつくりになっている。

万一、原子炉格納容器が破損しても、そこに水をかけて放射性物質が広がることを防ぐ大型放水砲や大型ポンプ車を配備している。