原子力発電
放射性物質
放射線とは
どのようなものか、調べてみましょう。
放射線について
放射線と放射性物質
放射線とは、物質を通りぬける能力をもつつぶや電磁波(光と電波を合わせた呼び方)のことで、目には見えず、音もにおいもありません。放射性物質とは、放射線を出す物質のことです。また、放射線を出す能力を放射能といいます。
放射線、放射性物質、放射能は、かい中電灯と光でたとえるとわかりやすいでしょう。

光→放射線
かい中電灯→放射性物質
光を出す能力→放射能
にあたる。
放射線には、
いくつも種類がある。
くわしくは
次で説明するぞ。
放射線の種類と透過力
放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線、中性子線などの種類があります。放射線には、物質を通りぬける能力(透過力)がありますが、種類によって透過力にはちがいがあります。放射線は、紙、金属、水など、いろいろなものでさえぎることができます。

出典:環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和3年度版)」より作成
エックス線は、
レントゲン写真に使われている。
放射線は、
みんなの周りにもあるんだ。
放射能の減り方
放射性物質の放射能(放射線を出す能力)は、時間がたつにつれて下がっていきます。放射能が半分になる期間を半減期といいますが、放射性物質の種類によって、半減期は異なります。
おもな放射性物質の半減期
原子の種類 |
半減期 |
|
---|---|---|
人工の |
ヨウ素131 |
約8日 |
コバルト60 |
約5年 |
|
セシウム137 |
約30年 |
|
プルトニウム239 |
約24,000年 |
|
自然界に |
ラドン222 |
約4日 |
ラジウム226 |
1,600年 |
|
カリウム40 |
約13億年 |
|
ウラン238 |
約45億年 |
出典:電気事業連合会「放射線Q&A」より作成
例えば、半減期が約8日のヨウ素131は、最初の放射能が約8日で半分に、約16日で半分の半分、つまり4分の1になります。約1か月が過ぎると、放射能は最初の16分の1に減ります。
放射能の減り方(ヨウ素131の場合)

放射能と放射線の単位
放射能・放射線の単位は、目的によって使い分けられています。放射能の量の単位で、放射性物質がどの程度放射線を出すかを表すのが「ベクレル(Bq)」。人体へのえいきょうの単位で、放射線により身体がどの程度えいきょうを受けたかを表すのが「シーベルト(Sv)」です。

1シーベルトの
1000分の1のミリシーベルトや、
100万分の1のマイクロシーベルトという
表し方もある。
放射線の発見の歴史
放射線は、19世紀の末にドイツのレントゲンによって発見されました。その後、多くの科学者が放射線の研究をして、さまざまな発見をしました。
年代 |
できごと |
---|---|
1895 |
ドイツのレントゲンが、X線を発見 |
1896 |
ドイツのトムソンが、X線の電離作用を発見 |
1898 |
フランスのキュリー夫妻(マリーとピエール)が、ポロニウムとラジウムを発見 |
1900 |
フランスのヴィラールが、ガンマ線を発見 |
1908 |
イギリスのラザフォードがアルファ線の構造を発見 |
1919 |
イギリスのラザフォードが原子核の人工変かんに成功 |
1932 |
イギリスのチャドウィックが中性子を発見 |
1934 |
フランスのキュリー夫妻(ジョリオとイレーヌ)が、人工放射能をつくり出すことに成功 |
1938 |
ドイツのハーンとマイトナーが、ウランの核分裂反応を発見 |

ヴィルヘルム・レントゲン
(1845〜1923年)
レントゲンはX線の発見により、1901年に第1回ノーベル物理学賞を受賞した。
日常生活と放射線
放射線は、自然界のあらゆるところにあります。また、私たちの体の中にも放射性物質があり、そこからも放射線が出ています。私たちはだれもが、どこにいても、つねに放射線を受けています。
放射線を受ける量

出典:電気事業連合会「原子力コンセンサス」より作成
空気や食べ物からも
放射線を受けているのか!
食べ物にふくまれる放射性物質
私たちが食べている食べ物にも放射性物質がふくまれています。例えば、体に必要な栄養素のひとつであるカリウムには、わずかにカリウム40という放射性物質がふくまれています。
食べ物にふくまれるカリウム40の放射能量(日本)

放射線のえいきょう
現在の研究では、一度に100ミリシーベルト未満の放射線を受けても、体へのえいきょうは確認されていません。100〜200ミリシーベルトの放射線を受けた場合のがんになるリスクは1.08倍になりますが、これは、塩分の取り過ぎや野菜不足でがんになるリスクとほぼ同じです。
放射線と生活習慣によってがんになるリスク(危険度)
基準になるグループを1とした場合
対象:40〜69さいの日本人
要因 |
がんになるリスク |
---|---|
1000〜2000ミリシーベルトの放射線を受けた場合 |
1.8倍 |
きつえん |
1.6倍 |
飲酒(毎日3合以上) |
|
やせ過ぎ |
1.29倍 |
肥満 |
1.22倍 |
200〜500ミリシーベルトの放射線を受けた場合 |
1.19倍 |
運動不足 |
1.15〜1.19倍 |
塩分の取り過ぎ |
1.11〜1.15倍 |
100〜200ミリシーベルトの放射線を受けた場合 |
1.08倍 |
野菜不足 |
1.06倍 |
出典:国立がん研究センター調べより作成
自然の中にある放射線でも、
レントゲンやCTなどの
人工の放射線でも
えいきょうは同じだ。
放射線の利用
放射線は、医療、工業、農業など、はば広い分野で利用されています。例えば、医療分野では、レントゲン写真やCTスキャン、がんなどの病気の治療などに使われています。また、工業分野では、自動車のタイヤのゴムをかたくしたり、プラスチック容器を熱にたえるようにするために、農業分野では、ジャガイモを長期保存用に発芽をおさえるためなどに利用されています。
さまざまな分野で利用される放射線
出典:原子力・エネルギー図面集より作成
生活に欠かせない、
深く関わっているもの
ばかりだな。
原子燃料サイクル
原子力発電所で使い終わったウラン燃料のうち、95~97%は、再利用できます。
この再利用できる部分(新しく生まれたプルトニウムと、核分裂せずに残ったウラン)を安全に取り出して加工し、再び原子力発電の燃料として使う「リサイクル」の計画が進められています。
このリサイクルの流れを「原子燃料サイクル」といいます。また、取り出したプルトニウムとウランを混ぜてつくった燃料を「MOX燃料」といいます。
資源には
限りがあるから、
リサイクルできるのは
いいことだな。
プルサーマル
MOX燃料を使って、現在の原子力発電所で発電することを「プルサーマル」といいます。プルサーマルは、ウラン資源のリサイクルを進める有効な方法です。伊方発電所では、2010年からプルサーマルによる発電を行っています。

リサイクルできない廃棄物の処理
原子力発電所で使い終わった燃料のうち、リサイクルできないものを高レベル放射性廃棄物といいます。高レベル放射性廃棄物は、将来、地下300mより深い、安定した地層にうめられる予定です。
高レベル放射性廃棄物の地層処分

たくさんのバリアで
守られてうめられるのだ。