伊方発電所3号機非常用ディーゼル発電機3A点検中の不具合(1999年)

1.経緯

伊方3号機は、1999年11月4日より第4回定期検査を実施、非常用ディーゼル発電機3Aは分解点検及び保護装置試験などを終え、11月26日に無負荷試運転のため起動したところ、ディーゼル機関クランク室の安全弁が作動したため、直ちに現地制御室にいた運転員が非常用ディーゼル発電機3Aを手動停止しました。
その後、11月26日にクランク室を点検した結果、第5クランクピン軸受部に焼き付きを確認しました。また、11月27日に潤滑油系統を点検した結果、第5クランクピン軸受部に潤滑油を供給する配管内にスポンジが残留しているのを確認しました。
引き続き、詳細な点検を行ったところ、11月30日クランク軸に微小な歪みが発生していることを確認したため、現状のままでは使用できないと判断し、関係箇所に通報連絡しました。

2.不具合の原因

潤滑油主こし器の点検作業において、内部清掃作業中に清掃に使用したスポンジを置き忘れ、組み立て時の異物確認でも見つけることができなかったため、潤滑油系統にスポンジが残留したものと考えられます。更に、残留したスポンジが潤滑油系統の運転に伴い潤滑油配管内を次第に移動し、第5クランクピン軸受部に潤滑油を供給している分岐管の入口部に達し、これを閉塞したものと考えられ、このために潤滑油量が減少し、第5クランクピン軸受部が焼き付き、クランク軸に微小な歪みが生じたものと推定されます。

伊方3号機非常用ディーゼル発電機(機関)鳥瞰図
拡大できます

3.対策

  • 機器の復旧
    • 微小な歪みの発生した当該クランク軸については、工場にて詳細調査及び補修を行い健全性を確認した上で再使用することとしました。
    • 焼き付いた第5クランクピンメタル及び手入れを実施した第1~第8主軸受部の主軸受メタルを取り替えました。
    • 熱影響を受けたと考えられる第5クランクピン廻りの部品(ピストン他)を取り替えました。
  • 異物混入防止に関する教育の徹底

    [異物混入防止に関する管理の強化]

    • 機器の構造を確認した上で、構造上、目視により直接異物確認できない箇所については、ハンドミラー等を用いて配管との接続部まで確実なチェックを行うこととし、その旨を作業要領書等に明記しました。
    • 持ち込み品の管理については、各作業において持ち込んだものは残さず持ち出すという作業の基本の徹底を図ることとし、この旨を作業要領書等に明記しました。

    [異物混入防止に関する教育の徹底]
    定期検査前の品質管理教育や作業要領書の読み合わせ及び作業前ミーティング等において、作業関係者に対し以下の教育の徹底を図りました。

    • 作業着手前に機器の構造図等を用いて異物確認の範囲を理解させるとともに、今回の事例を反映したワンポイントレッスン集を用いて異物管理の重要性についての認識を深めさせることとしました。
    • 持ち込んだ物は残さず持ち出すという作業の基本を繰り返し指導することとしました。

4.安全協定確認書の改定

非常用ディーゼル発電機の不具合については、当初、定期検査中に起こったもので軽微な調整で対応できると見られたため、愛媛県、伊方町、当社の3者で交わした安全協定には該当していないと判断し、通報連絡を行いませんでした。
その後の調査で、機器の調整では対応できないことが判明し、11月30日に愛媛県、伊方町に連絡しましたが、結果的に通報遅れになったことから、12月24日に3者間で安全協定確認書※1を「正常状態以外のすべての事象を直ちに通報連絡する」との内容に改定しました。
また、その際、愛媛県知事、伊方町長から当社社長宛に、「通報遅れ及び人為ミスを根絶するため、再発防止対策の早期実施、外部受注職員を含めた伊方発電所内のすべての作業員に対する教育・訓練の徹底により、伊方発電所の安全管理に万全を期し、信頼回復に取り組まれたい」との文書が渡されました。
愛媛県は、当社が通報連絡した事象をその重要度に応じて公表時期を3つに区分する公表要領を2001年4月1日に制定しました。
当社はその要領を遵守しつつ、事象の内容を一般の方々に理解していただけるよう、わかりやすい情報提供を心がけています。また、報道機関への発表、資料提供のほか、当社ホームページへ掲載するなど積極的な情報公開につとめています。

「安全協定確認書」とは、伊方発電所周辺の安全確保及び環境保全を定めた安全協定を円滑に運用するため、協定内容を補足説明したもの。

【参考】愛媛県の公表時期

区分 公表時期 内容(列)
A 直ちに公表 国への報告を要するトラブルに該当 人身事故等で救急車の出勤を要請等
B 48時間以内に公表 管理区域内での設備異常等
C 毎月10日に前月分を公表 A、Bに該当するもの以外